伝家の宝刀は、一度しか抜けない——「辞めてやる」と思った日(キャリアジャーナル⑦ 退職まで550日)

キャリアジャーナル

こんにちは、西風スマイルです。

FIRA60(60歳での、ちょっと早めのリタイア)まで、残り約550日。59歳の会社員です。

10月のキャリアジャーナルです。少し遅くなりました。

やっと550日になりましたね、でももう少しで520日になるんですが、

今月は、会社でモヤモヤすることがありました。

そして、そのモヤモヤが溜まった時に、つい出てきそうになる言葉があります。

「辞めてやる」

今日は、その言葉と、どう付き合うかの話です。

先輩二人との、ネガティブ会議

始まりは、先輩二人との立ち話でした。

最初は、再雇用の話です。私の会社では、再雇用になると、基本的には最後に勤務していた係で働くことになります。

そこから話は、後輩の言動、年下の上司の言動へと流れていきました。

50代後半のベテランが、ちょっとした一言に傷つく。そういう話です。

私は、聞き役でした。

聞きながら思ったのは、正直、これです。

隣の芝生は、青く見える。

新入社員と同じ職種、同じ働き方で再雇用される。そこには、たぶんプライドと不安の両方があります。

プライドのほうは、昔とやり方が違うことへの違和感です。つい「昔はこうだった」と言いたくなる。

不安のほうは、体です。若い人のようには、もう動けないかもしれない。

……と、聞き役の顔をして分析していましたが、他人事ではありませんでした。

機嫌よく働いている日は、気にならない

FIRA60が近づいてきて、私は、わりと機嫌よく働けています。

年下の上司に注意されても、たいていは気になりません。言われたことを直して、それで終わりです。

ただ、ひとつだけ、強く反応してしまうものがあります。

美学やプライドに触れる言葉です。

今月、それが来ました。

ルールとしては、正しいメール

年下の上司から、一通のメールが届きました。

詳しくは書けませんが、人の気持ちを考えずに出したような文面でした。

確かに、ルールとしては合っています。

ただ、そこを、その形で注意したら、周りがどう受け取るか。

人としてどうなんだ、と思ってしまった。

とはいえ、私にも悪いところはありました。

だから、何も言い返しませんでした。

謝罪のメールを送りました。感情は入れず、反論もせず。

……白状すると、文面はAIに作ってもらいました。口頭でも、「すみませんでした」と謝りました。

素直に謝った。でも、モヤモヤは残りました。

今思えば、プライドを傷つけられたというより、人としてできていない上司が、責任を転嫁しただけなのかもしれない。そう思っても、モヤモヤは消えない。

そして、それを周りのリーダーに見抜かれていました。

「モヤモヤしてるでしょ」

そう声をかけられました。顔に出ていたのだと思います。

白状します。私は「辞める」を、仕返しに使いたくなる

そのメールを見た時、私は、真っ黒になっていました。

周りに、「俺が辞めたら、どうなると思う?」といったことを口にしていたようです。

完全に、感情的でした。

これが、今回いちばん書いておきたいことです。

私は、腹が立った時に、「辞める」という行動を、仕返しの武器にしようとしてしまうのです。

自分で決めた基準に従って辞めるのなら、いい。でも、相手を困らせるために辞めるのは、違う。それは、あとで必ず後悔する種類の行動です。

思い返せば、前にも似たようなことがありました。

本気で辞めようと思ったことは、ほとんどありませんが、ただ、今辞めたら、みんなの仕事量が増えるだろうな、と考えたことはある。

そして、それが仕返しになる、と思ったことがあるのです。

我ながら、あまり褒められた考えではありません。

お金の理由が無いと、問いが残る

そのあと、もうひとつ考えてしまいました。

こんなことは、これからも日常的に起こるだろう。それなら、耐えられるのだろうか、と。

お金の理由で辞められないのなら、我慢するしかありません。

でも、私には、もうその理由がない。少なくとも、生活のために理不尽に耐え続けなければならない状況ではありません。

だとしたら、こういう問いが残ります。

それなら、なぜ辞めないのか。

「直ぐに辞められるのに」「嫌なら、辞めたら?」

お金の理由が無くなると、自分に疑問が残る。

では、なぜ定年まで働くのか

考えてみました。

退職金には、ほとんど影響がありません。

残り1年半で稼げる給料は、確かにもったいない。

人的資本を使い切りたい、という気持ちはあります。

でも、その「もったいない」のために我慢する価値があるのかと聞かれると、自信がない。

一度決めたことへの執着も、あります。60歳で辞める、と決めて、公言もしてきた。

……並べてみると、どれも決定的ではありません。

正直に言えば、残る理由は、無いのかもしれない。最後に、この安定した給料を享受したいだけなのかもしれません。

ただ、ひとつだけ思い当たることがあります。

私はたぶん、この1年半を、退職と再出発の準備の期間にしたいのです。

予行演習のようなものかもしれません。

妻は、冷静だった

このモヤモヤを、妻に話しました。

妻は、こう言いました。

「モヤモヤする気持ちは分かるし、仕返ししたい気持ちも分かる。でも、

その仕返しの効果は限定的で、1週間もすれば忘れるよ。それなのに、自分の美学を曲げるのは疑問。」

そして、こう続けました。

「でも、レッドラインを超えたら辞めたらいい。辞めると決めたら、反対しないよ」

いちばん効いたのは、「その仕返しの効果は限定的」という一言でした。

そうなのです。私が辞めたところで、困るのは、せいぜい1週間。そのうち、みんな忘れる。

その1週間のために、60歳で綺麗に辞めるという自分の美学を、自分で曲げることになる。

それは、割に合わない。

妻の言葉で、現実に引き戻されました。

伝家の宝刀は、一度しか抜けない

「いつでも辞められる」というのは、私にとって伝家の宝刀のようなものです。

以前、自己決定権の記事で「使わないカードを一枚持っている」と書きました。あの時は、持っているだけで世界の見え方が変わる、という話でした。

今回、分かったことがあります。

持っているからこそ、抜きたくなる時がある。

でも、伝家の宝刀は、一度しか抜けません。

腹が立った勢いで抜いてしまえば、60歳で辞めるという自分の計画の主導権を、腹の立った相手に渡すことになります。

自分で決めた退職が、相手に決めさせられた退職に変わってしまう。

それは、私の望んでいる辞め方ではありません。

▶ 「使わないカード」の話は、こちら → 「「辞めてやる」と思っても、辞めない。それでも世界は変わる——59歳の自己決定権」

私のレッドライン

だから、感情ではなく、基準で抜くことにしました。宝刀を抜くのは、次のどれかを越えた時だけです。

1つ目。心と体の健康、あるいは尊厳が、本当に脅かされた時。

2つ目。自分が大切にしてきた価値観や倫理観を、完全に否定された時。

3つ目。会社にいることのストレスが、退職後の人生の準備や、健康に、はっきり害を及ぼしていると判断した時。

このうち、いちばん現実に起こりそうなのは、1つ目です。

ただ、正直に書いておくと、健康や精神に支障が出たら、辞めるというより、たぶん会社に行きませんね。

それは、レッドラインというより、もう、体のほうが勝手に止まっている状態だと思います。

このラインを越えたら、それは仕返しではありません。自分を守るための、正当な判断です。

妻も、反対しないと言ってくれています。

受け流すのは、相手のためではない

では、ラインを越えない日々のモヤモヤは、どうするか。

受け流します。これが、私のイエローラインです。

受け流すというのは、相手に屈することでも、負けることでもありません。

このモヤモヤに、自分の残り1年半を使いたくない。それだけです。

そして、今回のメールの件を、その最初の例にしたいと思っています。

ここで流せなければ、綺麗に辞めるという、私の退職ではなくなってしまうからです。

だから、この記事を書きました。

感情を書き出して、モヤモヤと、心の支障とを分けておくために。

そして、なぜ辞めないのかを、自分に問うておくために。

おわりに

早期退職は早いほうがいい、と言う人がいます。

再雇用で2年は続けたほうがいい、と言う人もいます。

どちらも、正しいのだと思います。経済状態も、家族構成も、人それぞれですから。

ただ最近、思うことがあります。

FIRA60を達成しても、

五つの富が揃っていても、

その人の根っこにあるもの

パソコンで言えば、OSのようなものがしっかりしていなければ、たぶん、どこかでつまずく。

マインド、と言ってもいいのかもしれません。

腹が立った時に、宝刀を抜かずにいられるか。それも、そのOSの一部なのだと思います。

……と、偉そうにまとめましたが。

「このモヤモヤに1秒も時間を使いたくない」と書くために、この記事にずいぶん時間を使ってしまいました。

受け流しの練習は、まだ始まったばかりです。

それでは、また。

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