こんにちは、西風スマイルです。
58歳、サラリーマン生活もかれこれ40年。60歳での早期リタイア「FIRA60」を目指しながら、お金・時間・健康・好奇心・社会資本という「五つの富」について、あれこれ考えています。
最近、早期退職をされた方のブログを、よく読んでいます。その中で、気になっていることが、
50代から、資産を急上昇させる方が多い。
資産推移のグラフが、50歳前後までは、ほぼ横ばい。中には、マイナス圏に沈んでいる方もいる。ところが、そこから急角度で持ち直して、一気に1億円まで駆け上がっている。そんなケースです。
私が見たのは2〜3件ですから、統計でも何でもありません。ただ、別々の方のブログで同じ形のグラフを続けて見ると、さすがに気になります。50代前後で、いったい何が、そんなに変わるのか。
自分と重なるところもあるので、今日は、私自身の家計と紐付けて、この「V字」の正体を考えてみます。
仮に名前をつけるなら、
「55歳前ローン完済 × 60歳退職、金融資産5,000万円」という話です。
なぜ、50代からの資産急上昇ブログが多いのか
まず、一般論から。50代から資産を急上昇させて、60歳前後でFIREを達成したというブログは、実際、ネット上に多数あります。これは特殊な人の話ではなく、日本の税制や資産運用の仕組み、そして世代的な要因が重なって、多くの50代投資家に共通して起こっている現象なのだと思います。理由は、主に4つと考察します
一つ目は、複利効果が最大化する時期であること。20代〜40代で貯めた元本が、大きく育っている。資産額が大きいほど、同じ数%のリターンでも、増える額が跳ね上がります。100万円の5%は5万円ですが、5,000万円の5%は、250万円です。
二つ目は、人生でいちばん貯蓄率が高まる「黄金期」であること。子どもの教育費や独立が一段落し、住宅ローンの完済の目処が立ち、給与や役職手当は人生のピーク。収入が最大で、支出が最小。投資への入金力が、劇的に上がります。
三つ目は、近年の歴史的な株高。(2010年代〜2020年代)アベノミクス以降の日本株、そして米国株の長期的な強気相場。50代を迎えた投資家は、この上昇気流に、いちばん資金の大きい状態で乗れた世代です。
四つ目は、税制優遇の拡充。つみたてNISA、iDeCoの対象拡大、そして2024年の新NISA。これらをフル活用した50代が、リターンをそのまま資産に組み入れられるようになりました。
ただし、ブログの読み方には、注意もいる
一方で、こうした発信を読むときには、割り引いておきたいことも、あります。
- 生存者バイアス:投資に成功した人だけがブログを続け、失敗した人は途中で消えていく
- 初期入金力の差:「50代で急上昇」の裏には、30〜40代での高収入や質素倹約による、重厚な種銭が隠れていることが多い
- 退職金・相続:50代後半で入るまとまったお金が、急上昇のブースターになっているケースも多々ある
つまり、グラフの角度だけを真似ようとしても、うまくいかない。その前提を置いたうえで、ここからは、私自身の話をします。
V字回復は、魔法ではなかった
最初に、お断りしておきます。
あのV字回復は、特別な副業で爆稼ぎしたとか、奇跡の神トレードを決めたとか、そういう話ではないようです。少なくとも、私の場合は違いました。
私がやったことは、突き詰めれば、二つだけです。「家計管理」で守りを固めたこと。
そして、「投資」という打席に、降りずに立ち続けたこと。本当に、これだけなのです。
40代から50代前半にかけては、住宅ローンと家族の支出で、資産の数字が思うように増えない時期が続きました。教育費のピークとローンの引き落としが重なると、月末の残高を見て、ため息をつく月もありました。「このペースで、住宅ローンを返せるのか」と不安になったのは、一度や二度ではありません。
それでも、家計簿の管理はやめず、積立NISAで、淡々と買い続けました。相場が下がった月も、正直あまり見たくない評価額の月も、積立の設定だけは、触りませんでした。
いま振り返ると、この「何もしなかった」ことが、いちばん効いたのだと思います。
55歳、最後の返済が終わった時
住宅ローンの完済は、55歳になる少し前でした。最後に繰り上げ返済を済ませ、翌月の給料日以降の残高が減らない
正直に言うと、こんなに残るんだ。
20年、毎月あたりまえのように消えていった10万円あまりの引き落としが、翌月から、ぱたりと消える。それだけのことなのに、家計の景色は、一変しました。
毎月10万円+ボーナス払い。年間にすれば、180万円ぐらい。
この金額が「守り(返済)」から解放されて、そのまま「攻め(投資)」に回せるようになりました。積立額を一気に引き上げても、生活の体感は、まったく変わらない。
むしろ、週末の資産残高を見るのが、少し楽しみになったくらいです。
ローン完済とは、支出が減ることではなく、投資の弾が、毎月自動で装填されるようになることなのだ…そう実感しました。
5,000万円への「駆け上がり」
50代前半までの資産の増え方は、本当に緩やかでした。
増えているのかいないのか、グラフにすると、ほぼ水平です。
それが、55歳を境に、角度が変わりました。
一つは、ローン完済で、投資元本の供給が太くなったこと。もう一つは、複利がようやく「臨界点」を超えたこと。10年ぐらいかけて積み上げた元本に、2020年ごろからのインデックス投資(S&P500)の好調な相場が乗り、含み益が含み益を呼ぶ局面に入りました。この10年ほどの相場は、極端に言えば、持っているだけで上がり続けてくれた相場でもありました。
雪だるまは、最初の握りこぶし大のうちは、いくら転がしても、大きくなった気がしません。でも、ある大きさを超えた途端、ひと転がりで拾う雪の量が変わる。あの感覚です。
気がつけば、金融資産は5,000万円ぐらいに届いていました。
FIREブログで見た「50代からの駆け上がり」の正体は、おそらく、これです。
ローン完済による固定費の消滅、教育費の終了、そして複利の臨界点。
この三つが、50代半ばという同じ時期に、示し合わせたように重なる。
だから、あのV字は特別な人の奇跡ではなく、続けた人に順番に訪れる、ただの「時間差」なのだと思います。
最大の盲点──「支出の激減」は、努力せずにやってくる
資産形成の話は、どうしても「収入」「節約」「副業」に偏りがちです。
でも、50代の家計には、もう一つ、大きな変数があります。
ライフステージの変化に伴う、支出の自然な激減です。
節約というと、ケチケチ生活を想像されるかもしれません。私も昔は、そう思っていました。電気をこまめに消すとか、特売日にまとめ買いをするとか。ところが、本当に強いのは、そちらではありませんでした。
子育ての、完全終了。人生最大の固定費だった教育費や仕送りが、ある日を境に「ゼロ」になります。削ったのではありません。役目を終えて、勝手に消えたのです。
そして、夫婦2人のコンパクトな生活。この歳になると物欲も落ち着いて、お金の使い道が、「本当にお気に入りのカフェ」や「年に数回の旅行」など、満足度の高いものだけに、自然と絞られていきます。我慢している感覚は、ほとんどありません。
支出が減り、満足度は、むしろ上がる。若いころには想像もしなかった家計が、50代半ばに完成しました。
「1億円」ではなく、「完済+5,000万円」という答え
巷のFIREブログでは、「1億円」という数字が、よく目標に掲げられます。私も以前は、その数字を見るたびに、少し気が遠くなっていました。
でも、実際に「55歳前完済+金融資産5,000万円」という地点に立ってみて、感じ方が変わりました。
家賃もローンもない生活では、毎月の支出の土台が、驚くほど低い。そこに、教育費ゼロと、夫婦2人のコンパクトな家計が重なると、5,000万円という数字は、「1億円の半分」ではなく、「十分すぎる自由」に見えてきます。
何より大きいのは、金額そのものより、「60歳以降の人生を、自分でコントロールできる」という安心感です。働くかどうか、どこまで働くか、何に時間を使うか。それを、会社の都合ではなく、自分の側から決められる。FIRA60を目指す私にとって、これが、いちばんの資産かもしれません。
とはいえ、渦中では、何も見えていなかった
と、ここまで偉そうに種明かしをしてきましたが、白状します。この景色は、渦中にいた45歳の私には、まったく見えていませんでした。
グラフが横ばいの時期に、「あと10年で駆け上がるはずだ」と確信していたわけでは、ありません。
ただ不安で、ただ、やめなかった。それだけです。
だから、いま40代で、資産の数字が増えずに不安を抱えている方に、「大丈夫、必ずV字になります」と言い切る自信は、私にはありません。
相場は選べませんし、私のケースは、持っているだけで上がり続けたこの10年の追い風に、たまたま乗れただけかもしれない。これから先の相場は、誰にも見えません。私のこの先のグラフだって、どうなるかは分からないのです。
ただ、一つだけ、お伝えできることがあります。
もし、あなたが資産形成しているのであれば、FIREブログで見た、あの駆け上がった人たちのグラフも、50歳の時点では、あなたの資産額のグラフと、同じ形をしていましたと思います。
私のグラフも、そうでした。
この話が、同じように「60歳からの人生をどう生きるか」を考えている方の、少しでもヒントになれば幸いです。それでは、また。


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