こんにちは、西風スマイルです。
60歳での早期退職「FIRA60」を目指している、58歳の会社員です。カウントダウンも、いよいよ640日を切りました。お金・時間・健康・好奇心・社会資本、この五つの富についてあれこれ考えてます。
「親の老後問題」の第2回です。前回は、親とお金の話がどれだけこじれるかを書きました。今回は、親の財布に手を伸ばしてくる人たちの話です。
前回の最後に、ヘルパーさんやケアマネさんの忠告を書きました。
「記憶が曖昧になってきています。お薬を間違えて飲まれないよう、注意が必要です」
薬の管理が、1人ではできなくなる。
人は、ある日から1人では生きられなくなります。その時、どんなに心細かっただろうと、今は思います。母は85歳、1人暮らしでした。
そして、心細くなった家には、人が来るのです。(いい人も、悪い人も)
元気なうちは、お金の話は通じない
理想を言えば、親が70代のうちに話し合っておくべきです。それは分かっています。
でも、70代の親はまだ元気です。元気なうちは、聞く耳を持ってくれません。
それに、親世代は金融リテラシーの教育など受けていません。私たちも受けていませんが、親世代はもっとです。利回り、手数料、元本保証——こういう言葉で説明しても、通じないのです。
だから、あるべき正解なんて導き出せません。私も導き出せませんでした。
元気なうちに楽しく過ごしてもらう。少ない金額でも、満足のいく生活はできる。——せいぜい、そのくらいしか思いつきませんでした。
でも、そこで騙されたり、予期せぬ出費があると、お金だけでなく心身まで削られます。
偶然その1 屋根の業者と、娘からの電話
ある日、娘から電話がありました。娘はちょくちょく実家に顔を出してくれていました。
「おばあちゃんが、業者と話してる」
屋根の修理業者でした。
すぐに実家へ行って、母と話し合いました。そして屋根は、私が登って直しました。……私、屋根修理もできるんですよ。こう見えて。
この時、一番大きかったのは何かというと、業者を止めた私の判断ではありません。
娘が、たまたまその日に来ていたことです。
もし娘が来ていなかったら。もし電話をくれなかったら。私は何も知らないままでした。
あとから考えると、ここに教訓があります。私1人の目は、実家に月1回も届いていませんでした。でも、娘の目、ヘルパーさんの目、ご近所の目。見守る目の数だけ、偶然は必然に近づきます。
もし対策と呼べるものがあるとすれば、「自分以外の目」を増やしておくこと。娘の訪問をありがたがるだけでなく、「何か変わったことがあったら教えて」と、先にお願いしておくこと。私はあの時、それをやっていませんでした。偶然に、救われただけです。
偶然その2 外壁は、何度も来た
外壁の業者は、それこそ何度も来ていました。
でも、契約には至りませんでした。理由は単純です。
母に、お金が無かったからです。
年金だけの生活で、外壁工事のまとまったお金は出せない。だから諦めた。
これも、私が守ったわけではありません。
シロアリと、台所の水回り
一方で、母が自分で契約したものもあります。
シロアリの駆除。これは母単独の契約で、私は一切関わっていません。値段は、たぶん正規に近かったと思います。
台所の水回りも直しました。これも妥当な金額だったと思います。
そしてこれには、たぶん理由があります。娘がちょくちょく来ていたので、母は孫に良い顔をしたかったのだと思います。台所くらいは、綺麗にしておきたかった。
……こう書くと、業者が全部悪いわけでもないんですよね。台所の業者は、ぼったくりではなかった。それが救いでした。
危険サイン 保険屋が家に出入りしている
親の家に保険の外交員が出入りしている。これは、私の中では危険サインです。
母の家にも、付き合いで来ていた保険屋さんがいたと思います。
それが分かったのは、私が軽い入院をした時でした。
「入院の証明書をもらってきて」
母は、私には言いにくかったのでしょう。妻を通して、そう言ってきました。
……やばいな〜、と思いました。
私は、医療保険は不要だと考えています。それに、70代になったら、もう保険には入れないと思っていました。まさか、私に保険をかけているとは思っていませんでした。
保険にいくら使っているんだろう。そう思って、不安になりました。
でも、口喧嘩になるのが嫌で、この話題には触れませんでした。
正直に書きます。その頃の私は、母の家計には関わらないと決めていました。関わると喧嘩になる。だから、無視を決めていたのです。
保険は、そのあと母が自分でやめました。年金だけでは収支が回らなくなったからです。私が家計を預かった時には、もう全部解約されていました。
これも、私が守ったわけではありません。お金が無くなったから、やめられただけです。
「部屋を貸したい」
年金だけでは生活が回らなくなってきた頃です。母が言い出しました。
「部屋が空いてるから、貸したい」
収入を増やしたい。部屋は空いている。だから貸す。とても単純な発想です。
これには、私も流石に反対しました。
母は納得していなかったと思います。ですから、少し不安を煽りました。他人を家に入れるということ、その人がどんな人か分からないということ。母は危険性を感じたようで、この話は消えました。
不安を煽るというのは、あまり良い説得の仕方ではありません。でも、正論では止まらなかったのです。前回書いた通りです。細い橋の上では、正論より、感情のほうがよく渡るのです。
偶然その3 「土地を半分売りたい」
部屋の話の後、母は次のことを言い出しました。
「自宅の土地を、半分売りたい」
これにも反対しました。
ただ、私は軽く流す程度で済みました。理由があります。
土地の名義が、父のままだったのです。
父が亡くなった時、私は相続の名義変更をほとんど放置していました。通帳も、不動産の名義も、そのままでした。
だから、母が単独で売ることはできない。売れないと分かっていたから、私は本気で止める必要がなかったのです。
放置していたことが、結果的に母を守った。褒められる話ではありません。
そして母は、業者に連絡する勇気は無かったのだと思います。もし私が「手伝うよ」と言えば、もしかしたら売っていたかも。
不動産という言葉が出てきたら
親の口から不動産の話が出てきたら、私は要注意だと思っています。
部屋を貸す。相続対策で賃貸物件を建てる。不労所得を得る。——このあたりの言葉が並び始めたら、たいてい誰かに勧められています。
不動産業界には、こんな噂があります。
「この業界には、悪い人と、もっと悪い人しかいない」
言い過ぎだと思います。真面目な方もたくさんおられます。でも、この噂が生まれるくらいの業界だ、ということでもあります。
答え合わせ——一番よく来たのは、どれだったか
前回の最後に、書きました。保険、銀行、不動産、修繕業者。我が家に一番よく来たのは、どれだったか。
答え合わせをします。優勝は、ぶっちぎりで修繕業者です。屋根、外壁、シロアリ、水回り。家というのは外から見えるので、古びてくると、向こうから歩いてやって来るのです。
保険は、「来る」というより、もう中に入っていました。昔からの付き合いで入り込んでいて、気づいた時には、息子の私に保険が掛かっていたくらいです。
不動産は、外からは来ませんでした。その代わり、母の側から扉を開けそうになりました。部屋を貸したい。土地を売りたい。——外から来る者より、中から開こうとする扉のほうが、よほど怖かった。
銀行は、ほとんど記憶にありません。(ただ、地元の銀行が進める投資商品には注意が必要です)
こうして並べると、見えてくることがあります。来る者たちは、家の懐具合を、外から測っているのです。古びた屋根は、修繕業者を呼ぶ。年金暮らしの1人住まいは、まとまったお金の匂いがしないから、銀行は来ない。——家は、黙っていても、外に向かって発信しているのです。
家族信託という言葉
最近よく聞く言葉です。老後の資産を、信頼できる家族に管理してもらう仕組みです。資産が凍結される不安から、財産の自由度を上げるためのものです。
制度というより、信託法にもとづいた「契約」です。役所や裁判所が管理してくれるわけではなく、家族の間で契約書を作ります(普通は公正証書にします)。
裁判所が介入する成年後見制度だと、本人の財産を守ることが最優先されます。ですから実家の売却や、積極的な運用・節税対策が難しくなるケースが多い。家族信託なら、契約で定めた目的に従って柔軟に対応できる、と言われています。
ただ、いいことばかりではありません。
預かった家族が使い込む危険もあります。監督する機関がないのですから。
そして、一番大事な点はこれです。
家族信託は、親に判断能力があるうちにしか契約できません。
思い出してください。70代、元気なうちは聞く耳を持ってくれない。85歳、老いを感じてやっと任せてくれる。——その時にはもう、契約できる状態ではないかもしれないのです。
費用も、専門家に頼むと30万円から100万円程度が相場だそうです。
母の時代には、こんな言葉はありませんでした。そして今考えても、我が家には合わなかったと思います。信託するほどの資産もなかったし、そもそも、その費用を出す余裕がありませんでした。
お金だけでは、解決しない
実家が太い後輩が、こう言っていたのが印象的です。
「金はあるから、介護施設に入れたら、それで終わりですよ」
そうかなあ、と思いました。
両親にも思いも心もあります。そんなに簡単にはいきません。それに、お金を持っている親世代は、決まって我がままです。あまり息子の言うことは聞いてくれません。
ブログで読んだ「毒親の介護」という体験談も、壮絶なものでした。お金があれば解決する、という話ではないのです。
お金が無いで済んだのは、たまたまでした
こうして並べてみると、母が大きな被害に遭わなかった理由は、3つです。
1、娘がたまたま実家に来ていた
2、お金が無かった
3、土地の名義が父のままだった
全部、偶然です。
私の対策でも、母の金融リテラシーでもありません。
そして、ここが今でも気になる所です。
お金が無くて済ませられたのは、よかった。
でも業者は、クレジットもローンも用意して来ます。
年金生活者でも組めてしまうことがあります。
偶然が1つでも欠けていたら、母はローンを組んでいたかもしれません。
偶然を、仕組みに変えるなら
今から思えば、私がやるべきだったことは、3つです。
1つ。見守りの目を増やす。娘の訪問を偶然にせず、「変わったことがあったら教えて」と先に頼んでおく。ヘルパーさんにも、同じ一言を伝えておく。
2つ。通帳の残高ではなく、毎月の引き落としと、契約書の束を見る。残高は結果でしかありません。お金がどこへ流れているかは、引き落としと契約書にしか出ないのです。私がそれをやったのは、ずいぶん後になってからでした。
3つ。親の口から「不動産」という言葉が出たら、その日のうちに動く。翌週では、契約書ができていることがあります。
私は、どれも後手でした。だから正直に、こう書くしかないのです。母を守ったのは、私ではなく、3つの偶然でした、と。
最後に、逃げ道を1つだけ
訪問販売で契約してしまっても、法律で決められた契約書面を受け取った日から8日以内なら、理由を問わず契約を解除できます。クーリング・オフです。契約と一緒にクレジット契約を組まされた場合、そのクレジット契約も解除できます。
書面をもらっていなければ、そもそも8日が始まっていません。業者に「もう解約できない」と言われた場合も、8日を過ぎていてもできることがあります。
迷ったら、お住まいの自治体の消費生活センターへ。消費者ホットライン「188」でも繋がります。
親に覚えてもらうのは、たぶん難しいです。だから、これは私たちが覚えておくべき話です。
ただ、最近は解約したくてもできない、または、解約しても戻ってくるお金が減る可能性も高い場合があります、本当に予期せぬ出費があると、お金だけでなく心身まで削られます。
みなさんも、実家が地方で親が高齢の方は十分に注意していて丁度いいと思います
次回は最終回です。偶然ではなかったこと——距離を取っても、信頼は切らさない、という話を書きます。
それでは、また


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