イールドギャップと住宅価格——金利分が4万円に増えていた

FIRA60ー退職

こんにちは、西風スマイルです。

FIRA60(60歳での、ちょっと早めのリタイア)まで、残り約610日。59歳の会社員です。

今日は、住宅ローンと金利の話とついでに住宅価格。

実は今、私の会社は住宅ブーム&結婚と出産のブームです。

「家、買おう」——そんな会話が、当たり前のように交わされています。

私の肌感覚では、30代前後の既婚者の8割が、ローンを組んでいます。

メディアでよく見る「家を買えない世代」という話とは、ずいぶん雰囲気が違う。世間と、少しズレているのかもしれません。

20代後半で、4,000万円のフルローン

会社の若い後輩が、家を買いました。

20代後半。4,000万円前後を、フルローンで。

驚いたのは、そこではありません。

彼は、1,000万円ほどの株式投資をしています。それを繰上げ返済には回さず、そのまま運用しているのです。

いわゆる、イールドギャップを狙う戦略です。

ローンの金利より、運用の利回りのほうが高いなら、返さずに運用したほうが得だ、という考え方ですね。

彼の金融リテラシーは、高いと思います。生活も、ある程度ミニマリストです。

そして本人は、その戦略に納得している様子でした。

驚いたのは、私のほうです。

「金利分が、1.5万円から4万円になりました」

話をよく聞くと、こう言うのです。

「ついに金利が、上がりました。」

その結果、毎月の返済のうち金利にあたる部分が、1.5万円から4万円前後に増えた、と。

つい、口から出ました。

「たかっ」

でも、それ以上は言えませんでした。

彼がイールドギャップを取りにいっているのは分かっていましたし、この状況でもそうするだろうな、と思ったからです。

ただ、私が引っかかったのは、別のところでした。

毎月の返済額は、変わっていないというのです。

なぜ、支払額が変わらないのに金利が増えるのか

ここが、今回いちばん書いておきたいところです。

日本の変動金利ローンには、二つのルールがあります。

  • 5年ルール:金利が上がっても、5年間は毎月の返済額を変えない
  • 125%ルール:5年後に見直す時も、それまでの返済額の1.25倍までしか上げない

一見、借りる側を守る親切なルールに見えます。実際、急に返済額が跳ね上がることは防げます。

でも、返済額が変わらないということは、金利が上がったぶん、どこかにしわ寄せが行くということです。

どこに行くのか。

返済額の中身です。

一例として、試算してみます。借入残高が3,500万円、毎月の返済額が10万円のケースです(あくまで一般的な条件での概算で、後輩の実際の数字ではありません)。

  • 金利0.5%のとき:利息が約1.5万円、元金に回るのが約8.5万円
  • 金利1.4%のとき:利息が約4.1万円、元金に回るのが約5.9万円

毎月の手出しは、10万円のまま変わりません。

でも、元金の減るスピードが、月に2.6万円も遅くなっている。

年間にすれば、30万円以上です。

ここが怖いところだと思いました。

通帳を見ても、引き落とし額は同じなのです。家計簿の数字も変わらない。

何も起きていないように見えて、資産は静かに削られている。

125%ルールの先にあるもの

さらに金利が上がり続けると、どうなるか。

125%ルールがあるので、6年目の見直しでも、返済額は1.25倍までしか上がりません。

ところが、本来払うべき利息の増加分に、返済額が追いつかなくなることがあります。

すると「未払い利息」が発生します。

払っているのに、元金が減らない。これは極端ですが、返済額のすべてが利息に消えて、元金が1円も減らない状態にもなり得ます。

そして返済期間は延びません。ですから、最終回に、減らなかった元金と溜まった未払い利息が、まとめて請求されることになります。

老後に、数百万円の請求書。

もうひとつ、怖いことがあります。

元金が減っていないと、売りたくても売れない。査定額よりローン残高が多い、いわゆるオーバーローンの状態になるからです。

老後資金、FIRA60、早期退職も選択肢から消えてしまいます。

対策は、ひとつだけ

では、どうすればいいのか。

難しいことではありません。

銀行から届く「返済予定表」を、年に一度でいいので開くことです。

4000万円の彼も返済予定表を見ていたと思います

見るのは、返済額ではありません。そこは変わりませんから。

元金と利息の内訳が、どう変化しているか。

元金の減り方が鈍っていたら、それが金利上昇のサインです。

そのうえで、繰上げ返済用の資金を手元に用意しておく。金利が上がった時に、元本を減らせる準備をしておくことです。

どうしても返済額の増加に耐えられそうにないなら、固定金利への借り換えを試算してみる、という手もあります。

いずれにせよ、まずは内訳を見ることからです。

白状します。私も、イールドギャップを取っていました

ここまで書いておいて、正直に白状します。

実は私も、同じことをやっていました。

私が家を建てたのは、36歳の頃。土地と建物で、5,000万円ほど。120平米ほどの注文建築でした。

当時の金利は、1.3%くらいから始まって、途中で0.7%まで下がりました。

そして、あの頃の感覚は、金利3%くらいが一つの目安だと思っていたのです。いつか上がる、と。

ところが、一度も3%になることなく、返済は終わりました。

つまり、こういうことです。

私たちの時代は、繰上げ返済をせず、そのお金を運用に回したほうが、資産形成という意味では有利だった。

後輩がやっている戦略は、私の時代なら、正解だったのです。

……もっとも、これも後出しジャンケンです。

当時は誰にも分かりませんでした。3%になると思っていたから、みんな不安だったのです。

それでも、私は19年で返した

では、なぜ私は繰上げ返済をしたのか。

36歳で組んで、返し終わったのは55歳の少し前。19年でした。契約上は66歳まででしたから、11年ほど早く終わったことになります。

正直に言うと、あの頃の心境は「返したくない」でした。

それでも返したのは、損得の計算ではありません。

シンプルに考えること、それと、先人達の教えに従った

ウォーレン・バフェットの言葉に、こういうものがあります。

借金を返すことは、最大の投資である。

私は、脳のリソースをローンに割くのを、やめました。

金利がどうなるか、利ざやがどれだけ取れるか。そういう計算に、自分の思考を使い続けるのをやめた。

そして今になって、もうひとつ分かったことがあります。

もしローンを返していなければ、今の我が家の家計は赤字です。残業も必要だったでしょう。

ローンが残っていたら、今のような入金力にはならなかった。

心の軽さの話だと思っていたものが、実は家計の話でもあったわけです。

ちなみに、もう少し頑張れば15年で返せたかもしれません。でも、そこまで生活レベルを落としたくなかったし、正直、そこまで頭が回りませんでした。

……これも、後から思うだけの話です。後出しジャンケンです。

8割と2割の法則

ひとつ、肌感覚で思っていることを書きます。

住宅ローンで変動金利を選ぶ人は、8割くらいでしょうか。

そして、イールドギャップを狙いにいく人も、私の感覚では8割くらいいる気がします。

でも、それで本当に成功できるのは、2割くらいではないか。

理由は、二つあります。

ひとつは、投資信託を取り崩すのは、思っている以上に難しいということ。理屈では分かっていても、感情がついてきません。下がっている時に売るのは、なおさらです。

もうひとつは、高配当株のような方法を取るなら、それなりの入金力とタイミングが要ること。しかも、集中投資になりかねません。リスクは決して低くない。

そして、いちばん大事なことを書いておきます。

この7〜8年の株式相場は、異常な上昇でした。

金利のある世界に戻った今、これからの株価がどうなるかは、誰にも分かりません。

私が結果的にイールドギャップを取れたのも、その時代にいたからです。実力ではありません。

それにしても、家が高い

話を住宅の値段についても書いておきます。

失われた30年、デフレの時代と言われてきました。だから私は、家の値段もそれほど上がっていないのだろうと、勝手に思っていました。

私が建てた頃は、注文建築で坪50万円ほどで建てられたのです。

ところが、調べてみて驚きました。

今の建築費は、依頼先によって、大きく三つの価格帯に分かれるそうです。大手ハウスメーカーで坪120万円超、地域の工務店や中堅で坪90〜120万円、ローコストメーカーで坪70万円以上。

かつての坪50万円では今は無理。

コロナの時期に上がり、ナフサショックの時期に建材がまた上がった。現場にいる人間としては、後者は実感があります。

先日、電車の中で、こんな話をしているサラリーマンがいました。

「7,000万円の家を買う」と。建坪は30坪だそうです。

高い。

そういえば、近所を歩いていて思うことがあります。

このあたりの住宅地は、50〜70坪の敷地に、それなりに大きな家が建ち、駐車場も広く取ってありました。

ところが、最近建つ家は、土地の割に家がコンパクトに見えるのです。10年、20年前に建った家と比べると、明らかに。

価格が上がったぶん、家のほうが小さくなっているのかもしれません。

私は、若い人を批判できない

ここまで書いてきましたが、私に彼らを批判する資格はありません。

以前の記事にも書いた通り、私は「家は新築が当たり前」と思い込んで建てた人です。

訳の分からないところに、500万円くらい消えた覚えもあります。

総額が大きすぎて、50万円のオプションが小さく見える。あの感覚も、身をもって知っています。

今の知識があれば、たぶん中古を買っていたでしょう。

でも、それも後出しジャンケンです。

もし今の時代に30歳に戻って、周りがみんな家を買っている中で——

自分だけ買わない、という選択が、私にできるでしょうか。

たぶん、できません。

おわりに

結局のところ、答えは無いのかもしれません。

計算上は、イールドギャップを取るほうが得です。

でも、ローン返済に苦しまずにそれを続けられるかどうかは、人によって違います。

読者の方からは、「この人は分かっていないな」と言われるかもしれません。それも、そうだと思います。

勝ち負けでも、成功か失敗でもない気がするのです。

ただ、ひとつだけ言えることがあります。

そこに、あまり多くのリソースを割かないほうがいい。

お金は、道具でしかありません。

うまく使って、人生そのものの価値を高めたい。私はそう思っています。

……とはいえ、後輩の「金利分4万円」を聞いて、つい「たかっ」と口走ってしまった人間が言っても、説得力はないかもしれませんが。

それでは、また。

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