こんにちは、西風スマイルです。
FIRA60(60歳での、ちょっと早めのリタイア)まで、残り約670日。58歳の会社員です。お金・時間・健康・好奇心・社会資本という「五つの富」を見つめ直しながら、50代からの暮らしを考えています。
今日は退職金の話です。それも、よそ様向けの一般論ではなく、私自身がどうもらうつもりなのか、という少し生々しいほうの話を書いてみます。
先に、結論から言ってしまいます。私は、退職金を全額「一時金」で受け取るつもりです。年金型でちびちびもらうのではなく、定年のときにドンと一括で。
理由はいくつもありそうに見えて、実のところ、最後にお話しするたった一つに尽きます。ただ、その理由にたどり着くまでに、退職金まわりの今の話題と、私の会社の制度、それから「人の退職金って、ちょっと気になりますよね」という下世話な好奇心にも、少しだけお付き合いください。
今年1月、退職金の「5年ルール」が「10年ルール」になりました
まずは、旬の話題から。2026年1月に施行された税制改正で、退職所得控除のいわゆる「5年ルール」が「10年ルール」に変わりました。
これまでは、iDeCoや企業型DCを先に一時金で受け取り、その数年後に会社の退職金を受け取れば、それぞれに退職所得控除を満額あてられる、という受け取り方がありました。正確には、「退職金を受け取る年の前年以前4年以内」にDCの一時金を受け取っていなければ、勤続期間の重複調整をされずに済む。これが俗に言う「5年ルール」です。
今年1月からは、この「前年以前4年以内」が「前年以前9年以内」へと延長されました。つまり、DCの一時金と会社の退職金は、10年以上あけないと、控除が重複している分だけ削られるようになった、ということです。
ざっくり言えば、「先にDCをもらって、5年あけてから退職金」という昔の合わせ技が、「10年あけないと効かない」合わせ技に変わった。控除の二重取りを防ぐための適正化、という建て付けですね。
(なお、順番が逆——退職金が先で、DCが後——の場合は、もともと別のルールで見ることになっていて、こちらは今回変わっていません。)
で、この合わせ技、実際に使える人って何%なんでしょう
ここで、意地悪な問いを一つ。この「DCを先に、10年あけて退職金」という技、いったいどれくらいの人が使えるのでしょうか。
正直に白状すると、これに答えてくれるきれいな統計を、私は見つけられませんでした。なので、数字は出しません。ただ、仕組みのほうから考えると、答えはだいたい想像がつきます。
そもそもDCの一時金を受け取れるのは、60歳から。会社の退職金は、多くの会社で60歳の定年でドンと出ます。両方を10年あけようと思ったら、「60歳でDCを受け取り、70歳まで働いて、そこで退職金を受け取る」といった受け取り方ができる人でないと、成立しません。
そんな人、まわりにどれだけいますか。
改正前の「5年あけ」ですら、定年が60歳の会社では使いづらいものでした。「60歳でDC、65歳で退職金」が、やっと成立する人向けの技だったわけです。それが「10年あけ」になったのですから、使える人はさらに減ります。要するに、もともとごく一部の人の話で、今回それがいっそう細くなった。そういう改正だと、私は受け止めています。
その小技より、まず「自分の控除枠」を見たほうがいい
煽るような見出しのニュースを見ると、つい「うちも何か対策しなきゃ」と身構えてしまいます。でも、ほとんどの人にとって本当に大事なのは、小手先の受け取りタイミングより、自分の退職所得控除の「枠」がいくらあるのかを把握しておくことのほうだと思っています。
退職所得控除は、勤続20年までが1年あたり40万円、20年を超えた分は1年あたり70万円。私のように30年も同じ会社にしがみついていると、この枠だけで1,500万円を超えてきます。
しかも退職一時金は、控除を引いた残りを、さらに半分にしてから分離課税。給与に比べて、税の扱いがずいぶん優しくできています。多くの人にとって、退職金は「枠の中にすっぽり収まって、ほとんど税金がかからない」というのが実態だったりします。
だとすれば、10年ルールに頭を悩ませる前に、まず自分の枠を一度計算してみる。話は、そこからではないでしょうか。
ところで、私の退職金って、どんな制度なんでしょう
さて、ここからは少し、私自身の話を。人の財布の中身は気になるものです。同じように、人の退職金が「どういう仕組みで」「どうもらえるのか」も、けっこう気になりませんか。私は気になります。なので、まず自分のをさらしてしまいます。
ここ数十年、退職金の制度は、会社を取り巻く環境に合わせて、ずいぶん姿を変えてきました。肌感覚として、今は確定拠出年金(DC)に寄せている会社が多い。実際、給付を約束するDB(確定給付企業年金)は加入者が減り続け、自分で運用するDCが伸びて、今やほぼ肩を並べるところまで来ています。
そんな中で、私の会社の退職金は——DB、退職ポイント、DCの3つが揃っています。
我ながら、よくばりな構成だなと思います。会社が福利厚生の一環として、給料とは別のところで、長く勤めた人間に、それなりの付加価値を乗せてくれている。文句を言える立場ではありません。ありがたい話です。
ちなみに、退職金制度そのものがある会社は、厚労省の調査で74.9%。裏を返せば、4社に1社は、退職金そのものがない。3つも制度がある自分は、相当に恵まれているほうなのだと思います。
余談 ── 私の退職金は、もう「決まって」いる
退職金というと、最終給料の何倍とか、最終職位とか、勤続年数とかで、退職の瞬間に決まるイメージがあります。でも、私の場合は、少し事情が違います。
DBの部分は、以前、管理職だった時代に一度清算されていて、すでに退職金としてプールされています。退職ポイントも、勤続30年を超えると、増え幅はごくわずか。あとはDCの運用益くらいですが、これも残り2年では、伸びしろは知れています。
(2020年ごろからの5年で、株価が2倍に膨らんだ時期もありました。でも、あれはどう考えても、異常な相場です。あれが続く前提で、計画は立てられません。)
いまは、オンラインですべて把握できます。だから、自分の退職金がいくらで、控除枠がいくらかも、わりと簡単に計算できる。金額がもう動かないとなれば、あとは「どう受け取るか」だけが、自分で動かせる、たった一つの変数です。だからこそ、受け取り方を、真剣に考えてしまうのです。
税金のため? 社会保険料のため?
なぜ一時金なのか。税金のため? 社会保険料のため?
よくある説明をすると、こうです。「一時金は退職所得控除があって、税が軽い」「年金型は雑所得になって、社会保険料の対象になるから不利」——だから一時金、と。たしかに、それも一理あります。
それに、年金型にも、ちゃんと良さがあります。毎年、決まった額が振り込まれるので、自分で管理しなくていい。つい大金に手をつけてしまう「退職金の無駄づかい問題」を、仕組みで防げる。お金の管理が苦手な人にとっては、これは大きな安心です。
でも、正直に白状すると、私が一時金を選んだいちばんの理由は、税金でも、社会保険料でも、無駄づかい防止でもありません。理由は、もっと別のところにありました。
本当の理由は、ライフプランとキャッシュフロー表だった
私の退職金は、DB・退職ポイント・DCの割合が、ざっくり3:1:1。いちばん大きいのは、DBです。
そして、このDBは、年金型を選べば「終身」で受け取れます。死ぬまで、ずっと。ここがいやらしいところで、一時金でもらえるはずの額を全部この終身年金に振り向けると、計算上、82〜83歳あたりで損益分岐点を迎えます。それより長生きすれば、あとはもらい得。長生きリスクにも、インフレにも、ある程度の保険がかかります。仮に100歳まで生きたら、17〜18年分は「おまけ」でもらえる計算です。
……と、ここまで書くと、「じゃあ年金型のほうがいいじゃないか」と思いますよね。私も、最初はそう思っていました。終身でもらえる安心感は、理屈として、ちゃんと魅力的なんです。
でも、私はそうしません。なぜか。我が家のライフプランとキャッシュフロー表を、何度も引き直してみたからです。
そもそも「ライフプラン表」と「キャッシュフロー表」って何が違うの? という方は、
こちらから → 「ライフプラン表とキャッシュフロー表、何が違う?——50代に『絶対必要』な、お金の地図」
FIREというのは、ある程度の金融資産を取り崩しながら成り立つ仕組みです。そして金融資産というのは、少し厄介なやつで、長期で運用すれば、かなりの高確率で増えてくれる。けれど、暴落というショックには、めっぽう弱い。リーマンショック、コロナショック——あの局面で、資産は一時的に、大きくへこみました。
一方で、私たちの生活資金は、毎日必要です。もし暴落のさなかに、生活費のために株を売れば、いちばん安いところで、虎の子を手放すことになります。それを避けるには、ある程度の「現金クッション」を、手元に持っておくしかありません。
ここで、退職金の出番です。退職までは、給料をもらいながら、資産を運用で育てる。そして退職金は、一時金で、現金として受け取る。これを、年金が始まるまでの「繋ぎ」として、現金クッションに充てる。——この形が、私のキャッシュフロー表では、いちばんお金の価値を引き出せる、という絵になりました。現金収入のなくなる無年金の期間を、この現金で、慌てずに、有意義に渡っていく。そういう設計です。
60歳の1000万円と、80歳の1000万円
終身年金は、長生きという「不確実さ」に対する保険です。一方の一時金は、運用がそこそこうまくいく前提に乗っかった、少し欲張った賭けでもあります。どちらが正しい、という話ではありません。
ただ、私のキャッシュフロー表では、退職金を年金型でちびちびもらうより、一時金でドンと受け取るほうが、60歳時点の「購買力」を高く保てました。逆に年金型だと、いちばんお金を使いたい時期に手元が薄くなって、「死ぬときに、いちばんお金持ちになっている」——そんな絵が、浮かんできたのです。
ここで、五つの富の話に戻ります。お金は、しょせん道具です。それを使うのは、健康と、好奇心。そして何より、「使える時間」です。
この「五つの富」という考え方の原点は、こちらに書いています → 「五つの富——父のこと、友のこと、そして妻と眠った夜のこと」
60歳の1000万円と、80歳の1000万円。同じ1000万円でも、その価値を存分に引き出せるのは、どちらの年代でしょうか。
私の答えは、60歳の1000万円です。
もちろん、老後破綻だけは、絶対に避けたい。インフレのリスクも、消えてなくなるわけではありません。それでも、私の考えるFIRA60では——60歳から始まる「黄金期」に、ある程度のリスクを取ってでも、退職金は一時金で受け取って、現金クッションとして使う。そのほうが、五つの富を、いちばん享受できると思うのです。
たぶん私は、この考えのまま、退職を迎えると思います。——もっとも、その2年後に、暴落の恐怖に慄いて、しれっと再雇用されているかもしれませんが(笑)。
あなたも一度、自分の退職金の額、退職所得控除の枠、ライフプラン、そしてキャッシュフロー表を、確かめてみてはどうでしょうか。答えは、人の数だけあるはずです。
退職金の使い方で人生が変わる——何歳からでもできる「セルフFP」のすすめ
(退職金の使い方を考えてる方に、参考にどうぞ)
退職金を「減らす人」と「活かす人」の決定的な違い。|運用スキルより大切な“たった一つの視点”
(退職金を減らす人と、残せる人の違いは、運でも知識でもない。“ある考え方”の差だったのです)


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