58歳の昇給率、3つの「もったいない」——キャリアジャーナル③  (3つのAIに、自分のキャリアを査定させてみた)

キャリアジャーナル

こんにちは、西風スマイルです。

FIRA60(60歳での、ちょっと早めのリタイア)まで、残り約670日。58歳の会社員です。お金・時間・健康・好奇心・社会資本という「五つの富」を見つめ直しながら、50代からの暮らしを考えています。

季節が、またひとつ進みました。退職まで、あと670日。
ホルムズ海峡の話題は、まだ健在ですね。おかげで株価も、よく振れています。FIRA60を狙う身としては、こういうニュースが流れるたびに、口座を開きたくなる気持ちと、見ないでおこうという気持ちが、半分ずつになります。

今回は、昇給の話を入り口に、私の根っこにある「もったいない」について、キャリアジャーナルとして書いてみます。

今年の昇給率は、3.35%だった

サラリーパーソンなら、人の給料は気になるものです。
知ったところでどうにもならないのですが、それでも、気になる。

今年の私の昇給率は、3.35%でした。これはベースアップ抜き、定期昇給だけの数字です。大企業の世間相場はベースアップ込みで5%超と聞きましたので、それと比べると、我が社はむしろ低いほう。実際、私の業界では、我が社が一番昇給率が低かったようです。

ただ、これが「58歳・定年前のオヤジの昇給率」だと思うと、少し違って見えませんか

普通なら、この歳になれば頭打ちの人が多いはずです。多くの会社では、このあたりで昇給は止まります。それでも、定昇だけで3.35%ついている。世間の定昇相当は、だいたい1.5%前後らしいので、中身だけ見れば、そう悪くない数字なのだと思います。

何が言いたいのか。マウントを取りたいわけではありません。ポジショニングの話です。

運で潜り込んだ、ポジショニング

以前のブログで、「給料の高いポジションに身を置くことが大事」と書いたことがあります。今も、そう思っています。

インフラ、化学、エネルギー製造。資本投下の水準が高くて、安全に操業を続けることが、そのまま利益に直結する業界は、もともと賃金ベースが高く設計されています。そして今年も、儲かっている会社にお金が流れていました。利益が出ている会社では、昇給の原資も大きいのでしょう。

最近の大手は、インフレ率より高く給料を上げたがっているようにも見えます。人材確保のためでしょうね。人手不足というより、人材不足、と言ったほうが正確かもしれません。要するに、優秀な若手が欲しいのだと思います。そういう意味では、私のような年寄りが昇給するのは、おまけのようなものかもしれません。

そもそも、このポジション(会社)に潜り込めたこと自体が、正直、運でした。31年前、転職してこの会社に入ったとき、「この会社、レベルがやばいな」と思ったのを覚えています。自分の出身高校は、ちょっと言えないな、と。そんな人間が、気づけば40年選手です。世の中、分からないものです。

かといって、今から動こうとは思いません。50代での転職は、やっぱり厳しいですからね。

関連記事:資産5,000万円を実現する「2つの戦略」
(自分の転職を思い起こして、しみじみ感じたポジショニングことを書いています)

なぜ、早期退職しないのか

知人に「なぜ早期退職しないの?」と聞かれたことがあります。

朝、まだ暗いうちに出社するとき、同じことを自分にも問いかけます。「なぜ、早期退職しないんだ?」と。

そのたびに、「年齢のわりに、給料がいいから」と答えてきました。皆にもそう言い、自分にもそう言い聞かせてきました。

辞めるには、もったいない気持ちがあります。せっかく潜り込めたポジションです。労働資本を目一杯使って、もう少し稼いでおきたい、という欲も、正直あります。

でも、時間も「もったいない」

ただ、もったいないものは、給料だけではありません。時間です。

「働かない贅沢な時間」という、有限の資産があります。これを使える時期は、思っているより短い。それを使わずに過ごすのも、これはこれで、もったいない話です。

だから、60歳が潮時かな、とも思うのです。

インフレと、労働という保険

そうは言っても、FIRA60を狙う身にとって、怖いものが三つあります。
インフレ、株価暴落、それから事故(災害)。この3つは、隕石が落ちてくるようなものですね。

特に、インフレが怖い。以前、キャッシュフロー表をAIに見てもらったとき、インフレ率を改めて2%で計算し直したのですが、その結果に、少し背筋が伸びましたよ。今の生活費のままの暮らしでも、25年後には、その年だけで300万円ほど余計にかかる計算になる。給料という収入が消えたあとで、これはなかなか効いてきます。

ちなみに足元の物価は、いったん落ち着いてきました。2025年は総合指数で3%台まで上がっていたのが、2026年5月のコアCPI(生鮮を除く総合)は1.4%。補助金でずいぶん抑え込まれている、という事情はありますが。値上げラッシュ自体は、まだ続いていますけれどね。

そして、インフレへの一番の対策は、たぶん労働です
資産運用でも、節約でもなく、働くこと。
長く働けるという選択肢を持っておくこと自体が、ひとつの保険になります。

だから、矛盾するのです。
「時間がもったいないから60歳で辞めたい」と思う一方で、インフレが怖いから、働く選択肢は残しておきたい」とも思う。60歳以降、フルタイムで土日休み、それでそこそこの年収があるのなら、こんなにありがたいことはありません。
社会資本も手に入って、なおかつ労働でお金がもらえるなら、充分すぎるくらいです。

辞めたいのか、働きたいのか。我ながら、はっきりしません。

関連記事:五つの富——父のこと、友のこと、そして妻と眠った夜のこと
(時間、社会資本について、私がハマってきた、二つの罠のことについて書いてます)

3つのAIに、同じ質問をしてみた

—そんなふうに、自分の気持ちひとつ決めかねていたある日、ふと思い立って、3つのAIに、自分を査定させてみることにしました。

Gemini(ジェミニ)、ChatGPT(私は“チャッピー”と呼んでいます)、そしてClaude(クロード)。いま手元にあるこの3つに、まったく同じ文章を投げてみたのです。

きっかけは、ただの好奇心です。以前、キャッシュフロー表をAIに見てもらったことがあって、案外まともな指摘をするものだな、と思ったので。今度は自分自身を、機械の目で値踏みさせてみたくなった、というわけです。

投げたのは、こんなプロンプトでした。

【役割】日本の労働市場・給与水準・報酬制度に精通した、ベテランの人事コンサルタント。

【目的】私の給与水準と昇給スピードが、世間一般(日本平均・同職種・同年代)と比べてどのレベルにあるかを明確にし、今後のキャリア戦略を助言すること。

【手順】まず依頼を承諾した旨を一言。その上で、立ち位置を正確に判定するために必要な質問を5〜7項目、箇条書きで提示してほしい(いきなり全部答えさせず、まずは質問だけ)。

【渡した前提】58歳・化学業界の現場プラントオペレーター・役職なし/現在の年収・手当・昇給率/昇給の理由(定期昇給)/勤務地と企業規模/社会人経験年数と在籍年数/強み・スキル・マネジメント経験の有無。

回答後に、世間と比較した「給与レベルの評価」「昇給スピードの評価」「今後のキャリアの方向性」をフィードバックしてもらう。

結果は、3つとも「上位」でした。正直、予想どおりです。なので、その評価そのものは、ここには書きません。順位だの金額だのを並べ始めると、ただの自慢になってしまいますし、何より、面白いのは、そこではなかったからです。

先ほどの3.35%という数字も、もちろん渡しました。私の給料が世間のどのあたりにいるのか、たぶん、この数字だけで、なんとなく想像がつくと思います。自慢ではなく、ただただ、恵まれているなと思うのです。運よく、いい場所に潜り込めただけ、なのですが。

関連記事:自信作のキャッシュフロー表をAIに辛口添削させたら、58点だった
(AIを使って私のキャッシュフロー表を添削させた話です、参考までにどうぞ)

AIは、けっこう間違える

ただ、その前に、ひとつ正直なことを書いておきます。AIの査定は、そのまま鵜呑みにできるものではありませんでした。

たとえばクロードは、私の昇給にベースアップが含まれていると勘違いしていました。「いや、うちはベア無しだ」と直す。物価の数字も、似たような指標を取り違えていたので、そこも直しました。賢いのですが、平気で間違える。

なので、やったことは「AIに評価してもらう」というより、「AIにたたき台を出させて、自分で一つずつ直していく」作業でした。優秀だけれど少し早とちりな部下に、下書きを作らせる感覚に近い。決裁印は、最後は自分で押す。この距離感が、ちょうどいいなと思いました。

そうやって直しながら進めるうちに、評価の点数よりも、三つほど、自分にとっての収穫がありました。

収穫その① ──「辞める」と決めた瞬間、査定の意味が変わる

人事コンサル役のAIは、最初、ごく普通のことを言いました。「市場価値を上げましょう」「次のポジションを狙いましょう」と。

でも、私は60歳で辞めるつもりです。そう伝えた瞬間、話が変わりました。

出口が「退職」なら、昇進も、市場価値も、もう要らない。やるべきことは「攻め」ではなく、取りこぼさない「着地」だけになる。残り670日は、新しい高みを目指す期間ではなく、積み上げたものを、こぼさず受け取って降りていく期間なのだ、と。

言われてみれば当たり前なのですが、自分の口から「辞める」と言った途端に、景色がまるごと入れ替わったのは、少し新鮮でした。

収穫その②── 高みの中の、ごく普通

比較で、こんな数字が出てきました。厚生労働省の調査では、大企業に勤める55〜59歳の男性の所定内給与は、月額でおよそ数十万円。私の基本給は、ちょうどこの水準と、ほぼ同じでした。

つまり私の給料は、「飛び抜けて高い」のではなく、「大企業の高みの中では、むしろ普通」だということです。世間全体と比べれば上位でも、同じ土俵の人たちと並べれば、ど真ん中。

この「引き戻され方」が、私はわりと好きです。舞い上がらずに済みますから。年収が世間より高く出るのは、私の能力というより、賞与や手当を厚く積んでくれる、この会社の構造のおかげなのだと、改めて思いました。

収穫その③ ── 30年は、外から見ないと見えない

これが、一番こたえました。

AIは、私の経歴を淡々と並べてみせました。長い勤続。いくつかの資格。それを30年近く、現場で使い続けてきたこと。交替勤務に体を合わせてきたこと。異常時に、肝が据わること。管理職も、現場も、両方を経験していること。

並べられて、はっとしました。社内に30年もいると、これが全部、「当たり前」になってしまうのです。資格を使うのも、夜勤に耐えるのも、トラブルを捌くのも、ぜんぶ日常。上司も同僚も、「30年やってるんだから、それくらいできて当然」という世界で生きている。誰も、成果とは呼んでくれません。自分でも、成果だとは思っていませんでした。

それを、社内の事情を何も知らない機械が、ただの事実として並べてくれた。そうして初めて、「ああ、これは私のキャリアの成果だったのか」と、少しだけ、明るい気持ちになりました。身内に褒められるよりも、事情を知らない他人に、淡々と事実を読み上げられるほうが、効くことがあるのですね。

ここで、有名なピカソの逸話を思い出します。

あるとき、カフェにいたピカソに、一人の女性が気づいて声をかけました。「ここに、何か簡単な絵を描いてもらえませんか。お代は払いますから」。ピカソは、ものの数分でさらさらと描き上げ、こう言ったそうです。「1万ドルです」。驚いた女性が「たった数分で描いた絵に、そんなに?」と抗議すると、ピカソは答えました。「いや。私はこの絵を、数分で描いたのではない。ここまで来るのに、40年かけたのだ」。

30年、同じ現場に立ち続けてきた私の手も、たぶん少しは似ているのだと思います。——とはいえ、私には、ピカソのようなブランド力はありません。だから社外で、そのまま高く評価してもらえるわけではないのですが(笑)。

3つの「もったいない」

その、並べられた経歴の中に、使えば現金になるものがあります。現場の安全に関わる、いくつかの資格と、その実務の実績。これらは、フルタイムで働かなくても、嘱託やスポットの保安要員として、お金に換えられる類のものらしいのです。AI風に言えば、「人的資本の余熱」とでもいうのでしょうか。

これを使わずに辞めてしまうのは、たしかに、もったいない。

ただ、よく考えると、私はこの歳になって、ずっと「もったいない」と言い続けています。

  • 給料が高いから、辞めるのはもったいない。
  • 働かない贅沢な時間という、有限の資産を使わないのも、もったいない。
  • そしていま、人的資本の余熱を捨てるのも、もったいない。

もったいない、もったいない、もったいない。全部を取ることは、たぶん、できません。どれかを取れば、どれかを手放すことになる(「トレードオフの」世界観)。

その勿体なさを、ぜんぶ抱えたまま、それでも私は、贅沢な時間のほうを選ぶのだと思います。たぶん。

いや、670日後の自分が、本当にそう選ぶのかは、正直、まだ分かりませんけれど。
それではまた。

(前回までのキャリアジャーナル)
ポジションを失った日、57歳のベテランが気づいたこと——58歳キャリアジャーナル①

残り700日、世界が揺れる中で——58歳キャリアジャーナル②

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