子どもに、いくら遺すのか——23歳で宝くじに当たった私の話

FIRA60ー退職

こんにちは、西風スマイルです。

FIRA60(60歳での、ちょっと早めのリタイア)まで、残り約610日。59歳の会社員です。

お金・時間・健康・好奇心・社会資本という「五つの富」を見つめ直しながら、50代最後の1年間を噛みしめています。

少し前に、親の老後問題を三回に分けて書きました。

その中で、こんな話をしました。ろくにコミュニケーションを取っていない息子から、突然「お金、大丈夫なの?」と聞かれると、親は不信感を持ってしまう、と。

今度は、逆の立場の話です。

FIRA60を迎える私が、子どもにお金をどう渡すのか。あるいは、渡さないのか。

先に言っておきますが、答えは出ていません。

「うちは裕福だ」と言った瞬間に、起きること

親の老後問題の裏返しとして、こんな場面を想像してみてください。

子どもに「お金、大丈夫なの?」と聞かれて、親がこう答える。

「全然、心配いらないよ。これだけあるんだから。うちは裕福なの」

親としては、安心させるつもりです。でも、それを聞いた子どもは、どう思うでしょうか。

そんなにあるのなら、少し分けてくれない?

……そう思う息子や娘がいることに、親は気づいたほうがいい。私はそう思います。

親にお金があると分かった瞬間から、子どもはそれを当てにします。悪気があるわけではありません。ごく自然に、受け取って当然のもののように、思い始めるのです。

「親の資産を引き継いだら、俺FIREだから」

実は、身近にそういう例があります。

職場に、いわゆる実家が太い同僚がいます。たぶん、親の資産額を聞いたのでしょう。

その彼が、常々こう言うのです。

「親の資産を引き継いだら、俺、FIREだから」

それって、違うんじゃない?

そう思いましたが、私は何も言いませんでした。黙って、その場を離れました。それ以来、彼とはあまりお金の話をしないようにしています。

FIREを目指す人の会話では、あまり出てこないワードが出てくるので、聞かないようにしている、というのが正直なところです。

ただ、最近は少し心配にもなります。資産のある親を持つ人の口から出てくるキーワードが、どうも危なっかしいのです。大丈夫かな、と思う瞬間があります。

チャーリー・マンガーの、残酷な答え

投資家のチャーリー・マンガーに、こんな逸話があります。

ある裕福な友人が、彼に尋ねました。

「チャーリー、もし私が子どもたちに全財産を遺したら、彼らの野心ややる気を台無しにしてしまうだろうか?」

マンガーは、一切オブラートに包まずに答えました。

「もちろん、台無しになるさ。だが、それでも君は彼らにお金を遺さなければならない」

友人が驚いて、「なぜだ? 台無しになると分かっていて、なぜ遺さなきゃいけないんだ?」と聞き返すと、マンガーはこう言い放ったそうです。

「なぜなら、もしお金を遺さなければ、子どもたちに死ぬほど憎まれるからだ」

台無しになると分かっているのに、それでも残すしかない。

ちなみに、「富は三代続かない」という言い方は、日本だけのものではありません。国が変わっても、似たようなことわざが残っているそうです。洋の東西を問わず、みんな同じところで躓いてきた、ということなのでしょう。

白状します。狂ったのは、私です

ここまで、まるで他人事のように書いてきました。

でも、実は私自身に、思い当たる経験があります。

23歳か24歳の頃です。私は、宝くじに当たりました。

金額は、100万円。宝くじとしては、たかが知れた額です。

ただ、当たった時期が問題でした。人生でいちばんお金が必要で、いちばんお金が無かった時期だったのです。結婚を控えていました。

当たったと分かった瞬間、私が思ったのは、これでした。

「これで、結婚できる。」

それから数ヶ月、自分では、いたって普通に過ごしていたつもりでした。

ところが後年、当時いちばん身近だった友人——ほとんど毎日一緒に遊んでいた友達に、こう言われたのです。

「お前、あの頃、ぶっ飛んでたよ」

ゴルフクラブを買い、友達に奢り、やたらと勢いがあった、と。

本人には、まったく自覚がありませんでした。

これが、私がこのテーマで一番言いたいことです。

人は、持ったことのない額のお金を持つと、狂います。しかも厄介なことに、狂っている自覚が、本人にはないのです。

たかが100万円で、そうなりました。

もっとも、そのお金は最後に、妻に贈る指輪とネックレスになりました。おかげで、私は結婚できたわけです。

お金の威力は、凄い。あの時、心底そう思いました。そして、稼ごうと思った。今にして思えば、あれが私の金銭感覚の原点なのかもしれません。

金融リテラシーは、すぐには身につかない

だからこそ、思うのです。

金融リテラシーというのは、勉強したからといって、すぐに身につくものではありません。

……こう書くと、自分には金融リテラシーがある、というおごりに聞こえるかもしれません。もしそう聞こえるなら、控えたいと思います。

それでも、これだけは書いておきたい。

持て余すほどの資産を、若いうちに、何の苦労もなく受け取ってしまうと、間違った考えが育ってしまう。そして結果的に、そのお金のせいで不幸になる息子や娘がいます。

「あのお金を渡すんじゃなかった」

そう後悔することだけは、避けたいのです。

それでも、親は渡してしまう

ところが、現実はそう単純ではありません。

資産のある親ほど、結局は子どもにお金を渡してしまう。理由は、身も蓋もないものです。

嫌われたくないからです。

マンガーが言った通りでした。

世の中には、両極端の話が転がっています。「良かれと思って遺さなかったら、絶縁された」。「生前贈与をしたら、子どもが働かなくなった」。

どちらも本当にあることなのでしょう。

戒めは必要かもしれません。でも私は、そこまで強くはなれない気がしています。

同じお金でも、渡す年齢で意味が変わる

少し、現実的な話をします。

自分の感覚で言うと、20代や30代でお金をもらうと、「本当にくれるの?」という感じで、ありがたく受け取ります。

ところが45歳から50代くらいになると、感覚が変わります。もらう前に、「親の老後、大丈夫?」と言ってしまう。親の今後を、心配する側に回るのです。

同じ金額でも、渡す年齢によって、意味がまるで違ってきます。

よく聞くのは、子どもの住宅購入の頭金を出した、という話です。奨学金を、親が退職金で返してやった、という話も聞きます。

周りの反応は、たいてい「羨ましい」「恵まれてるね」です。

でも、その親の経済状態までは、誰にも見えません。

もし、老後資金や退職金を生前贈与に回しているのだとしたら、話は複雑です。

親の資産のリソースは、決まっています。老後資金を先に回せば、老後にかかる費用が消えるわけではありません。ただ、未来に先送りされるだけです。

結果として、65歳、70歳まで働くことになる。あるいは、いざという時の入院費を、結局は子どもが負担することになる。

働くことが悪いと言っているのではありません。ただ、順番を間違えると、めぐりめぐって子どもに返ってくる、ということです。

私がやっていること——毎月1万円

では、私自身はどうしているのか。

生前贈与をしています。ただし、ごく少額です。

子どもが独り立ちしてから、初めに100万円を子供達のNISA口座に一括投資、その後は毎月1万円ずつ。子どものNISA口座に積み立てています。

100万円くらいなら、もし無くなっても、良い勉強になるかもしれない。そのくらいに思うようにしています。

……そう、あの宝くじと、同じ金額です。

口座は、本人が管理しています。私は自由に見ることはできません。年に一回くらい、証券会社の口座を見せてもらう程度です。

なぜ現金で手渡さないのか。理由は単純です。

もし私が子どもの立場なら、「これは大事にしろよ」と言われながらお金を渡されるのは、嫌だからです。

NISA口座への積立なら、そういう言葉を添えずに済みます。仕組みが、代わりに言ってくれる。

ちなみに、私の株式の含み益は見せないようにしています。退職金の額にも、幸い、興味はなさそうです。よかった、と思っています。

NISAに入る前に、消えていた

ひとつ、実際にあった話を書きます。

年に一回、口座を見せてもらった時のことです。証券口座に入る前の、本人の銀行口座から、そのお金が消えていました。

「何に使ったの?」

普通に、そう聞きました。怒ってはいません。渡したお金を使うのは当たり前だと思っていましたから。

返ってきた答えは、素直なものでした。

転職活動中で、資金がなくて。

正直に言うと、その時はホッとしました。NISAの投資信託までは、手をつけていなかったからです。

でも今は、少し考えが変わりました。

いつ使ってもいい、と思うようになったのです。

20代の子どもとは、そんなものでしょう。困った時に使う。それも必要な経験なのだと思います。

それに、あれは自己投資でした。転職のための活動費です。文句のつけようがありません。

……まあ、推し活に使われたら、ちょっと考えますけどね。

お礼は、ありません

ちなみに、子どもたちからお礼を言われたことは、ほとんどありません。

これをどう思うか。

たぶん、本人たちも「これは自分のお金ではない」と思っているのだと思います。だから、いちいち礼を言うようなものでもない、と。

……そう思いたい、というのが本音かもしれません。

おわりに

この問題に、答えは出ませんでした。

渡しすぎれば、子どもの野心を削ぐ。渡さなければ、憎まれる。渡すなら、いつ、いくら、どんな形で渡すのか。

私にできるのは、毎月1万円を、子どもの口座に積み立てることくらいです。あとは、子どもたち自身の金融リテラシーが育ってくれることを、祈るのみ。

それでも、結婚する時には、たぶんお金を出すのでしょう。

可愛い子供たちには、できるだけ嫌われたくない。それが、私の本心です。

結局、私も、決断できていません。

それでは、また。

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