退職金を「守る人」と「攻める人」——現金を厚くしたい私と、リラに賭けた元同僚

FIRA60ー退職

こんにちは、西風スマイルです。

FIRA60(60歳での、ちょっと早めのリタイア)まで、残り約670日。58歳の会社員です。お金・時間・健康・好奇心・社会資本という「五つの富」を見つめ直しながら、50代からの暮らしを考えています。

ひと足先に会社を離れた元同僚と、ここしばらくメールのやり取りをしています。
同年代で、退職の話を本音でできる相手は、周りにそう多くありません。
だから彼からの返信は、私にとってかなり生々しい「先行事例」です。

今日はそのやり取りの中で出てきた、ある「お金の置き方」をめぐる話を書いてみます。
投資の手法そのものというより、退職を前にした人間が、どこに安心を置こうとするのか。
そういう話です。

年金までの「空白期間」という現実

彼が退職して、まず直面しているのが、収入のない期間です。

会社からの給料は止まる。
けれど年金の受給はまだ先。
その間、ざっくり2年ほど、定期的な収入がない時期が続くといいます。

傷病手当金をしばらく受け取る予定はあるそうですが、それも永遠には続きません。
退職金や貯金を取り崩しながら、年金が始まるまでの橋を渡っていくことになります。

この「空白期間」が、思っていた以上に人の心を揺らすのだと、彼のメールを読んで感じました。
毎月決まった額が振り込まれる
サラリーマンにとって当たり前すぎて意識もしなかったこのリズムが消えたとき、口座の残高だけが、静かに減っていく。
その感覚は、数字で理解しているのと、実際に味わうのとでは、別物なのだろうと思います。

スワップ収入を、彼は手放せない

そんな彼が、収入の空白を埋めるために続けているのが、トルコリラを使ったスワップポイント狙いの取引でした。

ごく簡単に言えば、金利の高い通貨を持っていると、その金利差にあたるお金が日々受け取れる仕組みです。
彼はそこから入ってくる「日々のチャリンチャリン」を、無収入期間のささやかな収入源として位置づけているようでした。

「条件が良くなったら買い増す」「退職金でも少し買い足すと思う」。
メールには、そんな言葉が並んでいました。

正直に書くと、私はこの分野にかなり疎いです。
だから、手法の良し悪しを語るつもりはありません
(高金利通貨には、金利差で得られる以上に為替で動くリスクもあります。当然ながら、投資の判断はあくまで自己責任で、という前提の話です)

ただ、彼の文章からにじんでいたのは、「収入が一本でも残っていてほしい」という、退職を前にした人間の切実さでした。


給料という太い柱が抜けたあと、細くてもいいから、自分で立てられる柱がほしい。
スワップ収入は、彼にとって、そういう柱なのだと思います。

私は「現金を厚くしたい」タイプ

一方の私は、退職前後は、むしろ現金の比率を厚めにしておきたいタイプです。

普段の資産運用はインデックス投資が中心で、これはこれで、値動きに一喜一憂しない代わりに、暴落とも付き合っていく覚悟がいります。


だからこそ、退職という人生の切り替えどきには、しばらくは何も考えずに生活できるだけの現金を、手元に置いておきたい。そう考えています。

彼と私は、同じ「退職後の不安」に向き合っているのに、たどり着いた答えが、正反対でした。

彼は「収入源をもう一本つくること」で安心しようとし、私は「すぐ使える現金を厚く持つこと」で安心しようとしている。

どちらが正しい、という話ではないのだと思います。

ただ、不安の鎮め方は、人によってこんなにも違うのか、と妙に印象に残りました。

それでも彼は、守るお金を分けていた

ここが、彼の話で私が一番うなった部分です。

リラについては「楽観的すぎて痛い目を見るかもしれない」「丼勘定だ」と、彼自身が認めていました。

かなり攻めた置き方をしている自覚は、あるのです。

それでも彼は、まだ手のかかるお子さんの学費だけは、リスクから切り離して先に確保しておく、と書いていました。

攻めるお金と、絶対に減らしてはいけないお金。
この二つを、彼はちゃんと別の財布に分けていたのです。

これは、私のように現金を厚く持つ人間にも、彼のように攻める人間にも、共通して効く考え方だと思いました。

全部を同じ色のお金にしない。
生活費、教育費、緊急資金、そして「最悪なくなっても生きていける投資資金」
同じ退職金でも、役割で分けておく。

攻め方は人それぞれでも、根っこのところで「守るべきものは守る」と決めている。
そこに、彼の覚悟のようなものを感じました。

「走り出したので仕方がない」

メールの終わりのほうに、彼はこう書いていました。
「走り出したので仕方がない」「トルコを応援してください」。
半分は冗談、半分は本音なのだろうと思います。

このひと言が、私には妙に刺さりました。
退職前後でいちばん怖いのは、もしかすると資産の額そのものではなく、自分の考え方が固まってしまうことかもしれません。

一度ある方法で走り出すと、途中で立ち止まって考え直すのは、思っている以上に難しい。

これは投資に限った話ではなく、生き方そのものにも言えそうです。
私自身、「現金を厚く持ちたい」という自分の方針を、いつのまにか疑わなくなっていないか。
彼のメールは、そんなことまで考えさせてくれました。

お金は、五つの富のひとつにすぎない

このブログでは、退職後の豊かさを「五つの富」
お金・時間・健康・好奇心・社会資本として考えています。

今日の話は一見お金の話ですが、私にとっては、むしろ社会資本の話です。


同年代で、退職のリアルを本音で語れる相手がいる。
手法は違っても、お互いの考え方を否定せずに交換できる
これは、口座の残高には表れないけれど、退職前後を、ずいぶん心強くしてくれる財産です。

彼のトルコリラの行く末がどうなるのか、私には分かりません。
うまく続くことを願ってはいますが、無責任に「大丈夫」とも言えません。

ただ、正反対の選択をした同年代の話を聞けたことで、自分の「安心のつくり方」を一度ほどいて、また結び直すきっかけには、なりました。

退職を前にしたお金の置き方に、多分、正解は無いのかもしれません。

現金を厚くする安心も、収入源を増やす安心も、どちらも本物なのだと思います。
あなたなら、年金までの空白期間を、何で埋めますか

私はまだ、その答えを探している途中です。

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