こんにちは、西風スマイルです。
58歳、サラリーマン生活もかれこれ40年。60歳での早期リタイア「FIRA60」を目指しながら、お金・時間・健康・好奇心・社会資本という「五つの富」について、あれこれ考えています。
今回は、3大支出の一つ、住居費の話です。教育資金、住宅資金、老後資金。日本のライフプランで絶対に見逃せない3つの支出のうち、真ん中のやつです。
ただ、先にお断りしておきます。今回は「家を買え・買うな」の話でも、不動産投資の話でもありません。住居と、時間と、お金。この3つの話です。
そもそも「3大支出」とは
念のため、3つを軽くおさらいします。
1つ目は、教育資金。子ども1人あたり、幼稚園から大学卒業まで、すべて公立か私立かで大きく変わりますが、約1,000万〜2,500万円かかると言われます。とくに大学の4年間に、負担が集中するのが特徴です。
2つ目が、住宅資金。マイホームの購入費や住宅ローンの総返済額、あるいは、一生涯に払う家賃の総額です。
3つ目が、老後資金。働く収入が減ったあと、年金だけでは足りない生活費を補うための蓄えですね。
こうして並べると、住居費は3大支出の「ど真ん中」にいます。しかも、他の2つと違って、35年ローンという形で、一気に「未来を先に決めてしまう」性質を持っています。ここが厄介なところだと、私は思っています。
日本人は、住居にいくら使っているのか
まず、スケール感から。人生で住居に払う総額は、住む地域や、求める広さ・クオリティで大きく変わりますが、都市部なら「8,000万〜1億円超」という試算も珍しくありません。地方でも、数千万円。いずれにしても、人生最大級の支出です。
では、日本人は持ち家派なのか、賃貸派なのか。総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」という大規模なデータがあり、日本全体では「持ち家が約6割、賃貸が約4割」。この比率は、過去数十年、ほとんど変わっていません。
面白いのは、年代別に見たときです。20代は8〜9割が賃貸。30代で、結婚や出産を機に持ち家率が5割前後へ急増し、40代で賃貸を逆転。50代〜60代以上では、7〜8割が持ち家、とされます。
つまり多くの日本人が、若い頃は賃貸、30〜40代でローンを組んでマイホーム、シニアになる頃には持ち家に落ち着く──という歩み方をしているわけです。ただし都市部に限れば、あえて身軽な賃貸を続ける人も4〜5割近くいます。どちらを選んでも、珍しいことではありません。
「持ち家か賃貸か」より、大事なこと
持ち家か、賃貸か。この議論は、永遠に続きます。
でも私は、どちらが得かの計算より、大切なことがあると思っています。
「老後のキャッシュフローを、どう設計するか」です。
賃貸なら、老後も家賃を払い続けるための、十分な備え(分配金や、年金の上乗せなど)が要ります。
持ち家なら、現役時代にローンを終えて、老後は修繕費と税金だけでミニマルに暮らす、という設計になります。どちらも、成立します。成立させるための準備が、違うだけです。
そして選択肢は、実は4つあります。
新築を買う。
中古を買う。
実家を相続または同居する。
賃貸に住む。
「中古ならコストほぼゼロで住める」という動画も見かけますが、あれは、中古を安く買える前提の話。選択肢はいろいろあって、それに伴うコストもまちまち。それぞれの選択に、それぞれの悩みがあります。
軽自動車か、ベンツか
ここからが、今回いちばん書きたかった話です。
住まいを車に例えるなら、軽自動車で済ませることもできるし、ベンツを選ぶこともできます。移動するだけなら、軽で十分。でも、いい車には、いい車にしかない何かがある。ただし、リソース(資金)が要ります。
誰でも、安く済ませたい。
でも、居住空間はいい方がいい。
この矛盾に、どう折り合いをつけるか。
私は、こう考えています。子どもや家族と過ごす時間には、「その時にしか味わえない時間」があります。その空間と時間を手に入れるためなら、資金を出す価値があるかもしれない。逆に、「これは無駄に出している」と感じるなら、そこは抑えて、もっと満足の大きいところに回せばいい。
つまり住居費は、金額の大小ではなく、「何のための空間か」で決まる支出なのだと思います。
怖いのは、金銭感覚が麻痺する瞬間
今になって振り返ると、いちばん危なかったのは、「買う気になっていた」あの瞬間です。
総額が何千万円という単位になると、人間の感覚は、おかしくなります。残りのオプションが50万円でも、100万円でも、「まあ、ついでに」と思ってしまう。本体が大きすぎて、50万円が、もう小さく見えてしまうんです。これは本当に、あとで効いてきます。
私たちも、当時は「家は新築が当たり前」と思い込んでいました。
なぜあのとき、中古を選べなかったのか。
今なら少しは分かる気がしますが、当時はもう、頭が新築に染まっていました。
だから、ひとつだけ。老害ブログと言われるのを覚悟で、書きます。
もし「お金持ちになるつもり」なら、新築は、いったん立ち止まったほうがいいかもしれません。
新築には「新築プレミアム」という、住んだ瞬間に消える価格が乗っています。子ども家族と、新しい家に住みたい。その気持ちは、痛いほど分かります。私たちも、そうでした。ただ、それは資産形成ではなく、消費(住居費の先払い)だと割り切っておいたほうが、あとがラクだと思うのです。
いちばん書きにくい、破綻の話
怖い話も、正直に書いておきます。
住宅ローンの破綻率は、およそ3%と言われます。100人に、3人です。ただし、この数字はフラット35を提供する住宅金融支援機構のデータがベースで、審査の厳しい民間の金融機関を含めると、もう少し下がるとされています。だから「3%」は、やや高めに出た数字だと思っておくのがよさそうです。
そして、これが私にとって、いちばん重い事実なのですが──家を手放すことになるのは、買ってすぐの若い頃ではありません。任意売却の相談現場では、いちばん多いのが50代、次が60代だそうです。つまり、収入の風向きが変わる中高年で、静かに行き詰まる。リストラ、病気、親の介護、離婚。買った当時には想像もしなかったことが、20年後に効いてくるわけです。
35年ローンというのは、「35年後の自分は、今と同じくらい元気で、同じくらい稼いでいる」という前提に、そっと乗っかっています。その前提が、実は、いちばん脆いのかもしれません。
私の場合──夢を丸ごと詰め込んだ、注文建築
自分の話をします。私の家は、注文建築です。今思えば、訳のわからないところに500万円くらい消えた覚えがあります。設計料、測量、地盤調査……。
リビング階段。リビング吹き抜け。塗り壁。無垢のフローリング。7寸の無垢の大黒柱。
なんだか訳のわからないくらい、浪費しました。夫婦の夢を、丸ごと実現したんです。
それでも面白いもので、そんな家でも、100%にはなりませんでした。住んでみると、もっともっと、という気持ちが出てくるんです。人間の欲は、家では満たしきれないようです。
その家で、子どもたちは育ち、成人して出て行きました。そのあと母を引き取ることになり、母用の部屋も改築しました。この居住空間で、夫婦、子どもたち、母と過ごした時間は、かけがえのないものでした。良い思い出も、たくさんあります。
でも、正直に書きます。
その反対側で、この家が、私たち夫婦の足枷になった時期もありました。「この額の資金を運用していれば」と考えたことも、一度や二度ではありません。
55歳、住宅ローンを完済した日
私は55歳で、住宅ローンを完済できました。
理屈の上では、低金利のローンを残して、手元資金を運用に回す、という考え方も検討しました。でも、完済して、本当に気持ちが楽になりました。計算上の損得と、心の軽さ。私の場合は、心の軽さが勝ちました。これは、大変良かったと思っています。
そして、年齢が上がると、家へのニーズも変わっていきます。吹き抜けのリビングとリビング階段。
私たちのお気に入りです。
でも、歳をとれば「2階に上がるのも面倒」「もっとコンパクトでも」と思う日が来るかもしれません。行動的な時期は少し田舎でも動けましたが、歳をとると、行動範囲は狭くなる。老後は、夫婦だけの終の住処でもいい、という考えにも、なってきました。
でも、不思議なもので。今の家を建てていなければ、この「次のニーズの変化」にも、気づけなかった気がするのです。
この家の思い出は決して忘れないし、良い経験になりました。
まとめ──お金の奴隷ではなく、人生の主役として
まだローンに苦しんでいる同胞たちも、いると思います。
家を買って足枷になった、という悩み。私にも、覚えがあります。でも、その悩みは、見方を変えれば「これからの人生で、本当に大切なものは何か」を教えてくれる、人生の道標でもあります。
で、結局。家は浪費なのか、時間への投資なのか。
私の答えは、浪費でした。そして同時に、時間への投資でもあった、と思っています。あの家がなければ、家族と過ごした、あのかけがえのない時間の器は、なかったのですから。
ただし、正直に付け加えます。
こうして笑って言えるのは、無事に住宅ローンを完済して、老後資金の目処もついたからです。
答えは、着地できてから、ようやく出るものなのかもしれません。
総額1億円(人生で)という重い支出と向き合い、格闘してきた私たちだからこそ。
最後は「お金の奴隷」ではなく、「人生の主役」として、一番心地よい着地点を見つけ出したいものです。
そして、これから新築を買おうと思っている若い人へ。ひとつだけ、老婆心を。
建築会社の言いなりになったり、自分の支払い能力以上のローンを組んだりするのは、少しだけ立ち止まって、考えてみてください。
家は、浪費かもしれません。
でも、家族との時間の、器でもあります。


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