こんにちは、西風スマイルです。
FIRA60(60歳での、ちょっと早めのリタイア)まで、残り約610日。59歳の会社員です。
理不尽なことを言われた時、「こんな会社、辞めてやる」と思ったことはありませんか。
でも、辞めない。
辞められないから。ローンがあり、教育費があり、来月も再来月も、生活は続くからです。
私も、ずっとそうでした。
今日は、その状態から抜けた話を書きます。
といっても、辞めたわけではありません。私はまだ働いています。610日後まで、辞めるつもりもありません。
それなのに、世界の見え方が変わってしまった。今日は、その話です。
見えない鎖の正体
長いあいだ、私は渦の中にいる感覚で生きてきました。
自分ではどうすることもできない渦。その中で、溺れないように、なんとか浮かんでいる存在。
理不尽な上司の話ではありません。もっと、つかみどころのないものです。
時間の縛りと、お金の縛り。言うなれば、「無」の制約です。
仕事では、時間に縛られます。では余暇なら自由かというと、今度はお金に縛られる。楽しいことを探すにも、拘束されない時間が要る。楽しい旅行にも、お金は要る。
どちらか一方が空いていても、自由にはなりません。
しかも厄介なのは、その鎖が、本来は楽しいはずのもので出来ていることです。
家。家庭。仕事。
どれも、幸せの象徴のような言葉です。ところが裏を返すと、こうなります。
家は、ローン苦。家庭は、生活苦。そして仕事は、みんな一度は辞めたいと思っている。
そして、いちばん厄介なのがこれです。
ほとんどの人が、それを当たり前だと思って、疑いもしない。
「高い」と、私は言った
鎖につながれている人は、つながれていることに気づきません。
私が自分の鎖に気づいたのは、ずっと後になってからです。
何もかもをミニマムにしていた頃。ローンがあり、教育費があり、残業しないと家計が回らなかった時期のことです。
妻と旅行の話をしていて、1泊2万円台のホテルが候補に挙がりました。
その時、私は言ったのです。
「高い」
自分でも、無意識でした。考えて言ったのではなく、口が勝手にそう言った。
今になって振り返ると、あれが鎖の音だったのだと思います。
あの時、妻はどう思ったでしょうか。今さら聞く勇気は、ありません。
使わないカードを、一枚持った
では、その鎖はいつ緩んだのか。
教育費が終わった時。「あれ?」と思いました。あんなに重かったものが、ある月から、すっと無くなった。
住宅ローンを完済した時も、そうです。引き落としのない月の残高を見て、「え?」と思った。
どちらも、拍子抜けするほど静かな出来事でした。
資産が目標額に届いた時も、同じです。景色は何も変わりませんでした。
むしろ「もっと、もっと」と思うことのほうが多かった。
変わったのは、そのあとです。
1億も、2億も無い。でも、十分だ。
そう思うことにした。その瞬間から、気持ちが軽くなりました。
そして今、こう思えるようになっています。
何か理不尽なことが起きたら、すぐに会社を辞めればいい。
もちろん、今辞めれば資産は計画より減ります。それでも、理不尽に耐え続けるよりはいい。
面白いのは、ここからです。
実際には、辞めるつもりはありません。最後まで給与の恩恵を受けてから辞めればいい、と思っています。
つまり私は、使わないカードを一枚、握っただけです。
それなのに、握った瞬間から、世界の見え方が変わりました。
これが、今日いちばん書きたかったことです。
自由とは、選択肢を使うことではありませんでした。使える状態を、持っていることでした。
気になって、調べてみた
気になって、調べてみました。
神戸大学と同志社大学が、日本人2万人を対象に、何が幸福感を左右するのかを調べた研究があるそうです。
結果は、少し意外なものでした。
幸福感に効いていたのは、所得でも、学歴でもなかった。いちばん強く影響していたのは、「自分で決めたかどうか」だったのです。
そして所得のほうは、ある水準を超えると、幸福度への効き目が薄くなっていく。
……なるほど、と思いました。
目標額に届いた時に何も感じず、「十分だ」と決めた瞬間に軽くなった理由。金額ではなく、決めたこと自体が効いていた、ということになります。
何が変わったか——残業、収支、休み
感覚の話ばかりでは頼りないので、具体的に何が変わったかを書いておきます。
まず、残業。昔は、勤務の都合でどうしても発生しました。今は、ポストを限定したこともあって、無理な残業はありません。
次に、収支。ローンがあった頃は、赤字にしないために、ある程度の残業代が必要でした。生活が、残業に乗っかっていたのです。今は、残業をしなくても収支のバランスが取れます。
これが、思っていた以上に効きました。収支が取れているというだけで、体まで軽くなる。
そして、休み。昔は長期休暇をほとんど取りませんでした。今は取りますし、休みの日に会社のことを考えなくなりました。
以前は、休んでいても頭のどこかに会社がありました。今は、純粋に余暇を楽しめる。
ちなみに、仕事の手を抜くようになったわけではありません。灼熱の現場にも立っています。ただ、右往左往しなくなった。トラブルが起きても、以前ほど自分に引きつけて悩まなくなりました。
あなたのカードは、何ですか
ここで、あなたにも聞いてみたいことがあります。
もし今、会社で理不尽なことが起きたら、あなたは辞められますか。
たぶん、多くの方の答えは「無理だ」だと思います。私も、長いことそうでした。
では、質問を変えます。
あと何があれば、「辞めてもいい」と思えるようになりますか。
ローンの完済でしょうか。教育費の終了でしょうか。ある金額の貯蓄でしょうか。それとも、資格や、他で通用するという確信でしょうか。
その「あと何か」が、あなたのカードです。
大事なのは、そのカードを使うことではありません。持っていることです。
私の場合は、たまたま資産でした。でも、人によって違うはずです。
そして、もうひとつ。
カードを持ったあとも、私は会社を辞めていません。淡々と働いています。
むしろ、持ってからのほうが、仕事は楽になりました。
20年前の自分に、何を言うか
最後に、少し考えたことがあります。
もし、渦の中で必死に浮かんでいた20年前の私が目の前にいたら、何を言ってやれるだろう、と。
考えてみて、すぐに分かりました。
たぶん、何を言っても信じません。仮に信じたとしても、あいつ(私)は同じように、淡々と同じことをするはずです。
それしか正解が無かったからです。そして、それが答えでもあった。
ローンを返し、教育費を払い、残業をして、ミニマムに暮らして、1泊2万円のホテルに「高い」と言う。
あれを全部やったから、今があります。
それでも一言だけ伝えるなら、こうでしょうか。
目の前のことに、トライし続けろ。
……とはいえ、いまだにホテルの値段を見ると、一瞬、口が「高い」と言いそうになるのですが。
それでは、また。


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