自信作のキャッシュフロー表をAIに辛口添削させたら、58点だった

FIRA60ー退職

こんにちは、西風スマイルです。

60歳での早期リタイア「FIRA60」を目指す、58歳の会社員です。リタイアまで、あと約670日になりました。

リタイア計画の心臓部は、なんといってもライフプラン表とキャッシュフロー表です。私も自作のExcelで、2052年(85歳)までの収支と資産推移を作り込んできました。

退職翌年の住民税の重さ(現役最後の年の所得にかかるので、想像以上です)。国民健康保険の、初年度の跳ね上がり。墓じまいの費用。忘れられがちな支出も拾ったつもりで、行と行の計算の辻褄も合わせてあります。

正直に言うと、少し自信がありました。表の結論は「85歳時点でも、資産は5,000万円以上残る」。これを見て、FIRA60はもう大丈夫だろうと思っていたのです。

AIに「忖度なしの辛口添削」を頼んでみた

そこで、ある実験をしてみました。

AI(Anthropic社の最上位モデル・Mythos級の「Claude Fable」)に、この表を丸ごと渡して、添削させてみたのです。このモデル、ニュースでも見かけるほど評判になっていて、ちょうど期間限定で通常料金のまま使えたので、「それなら一度、本気でやらせてみよう」と思い立ちました。

使ったプロンプト(依頼文)は、こんな内容です。

  • 【前提】58歳・会社員。60歳でのFIRA(早期リタイア)が目標。リタイアまで約670日。妻と二人暮らし。資産運用はeMAXIS Slim S&P500中心、日本の高配当株も一部あり。
  • 【依頼】添付のライフプラン表とキャッシュフロー表を、辛口で添削・評価してください。忖度や励ましは不要です。問題点をはっきり指摘してほしいです。
  • 【見てほしい観点】前提条件(運用利回り・インフレ率・想定寿命・年金額)が現実的か/抜けている支出はないか/資産が尽きるリスク、特に「長生きリスク」と「暴落シナリオ」への耐性/年金の受給開始タイミングは最適か/リタイア後の取り崩し順序・方法に無理はないか。
  • 【アウトプット】「良い点」と「懸念点」を分けて。懸念点には優先度(高・中・低)を。できるだけ具体的な数字で。最後に総合評価(100点満点+一言コメント)を。

返ってきた点数は、58点でした。

コメントはこうです。「Excelの工作精度は80点、前提条件の現実性は40点」。

計算は合っているのに、前提に穴がある。つまり、設計図はきれいなのに、建てる土地を間違えていた。、ということです。少しあった自信は、ほんの数分で打ち砕かれました。

先に言っておくと、私も甘い表を作っていたわけではない

悔しいので、先に言い訳をさせてください(笑)。私の表は、決して「ざっくり家計簿」ではありません。これが、ちょっとした自慢のスプレッドシートでした。

まず、支出側。生活費だけでなく、こんな項目を並べてあります。

支出項目内容・考え方
生活費家計管理で集計した、年間金額を入力
税金(固定資産・自動車)固定資産税や自動車関連の税を入力
住民税+地方税給与所得が終わり、年金等にかかるので別項目に
国民健康保険(夫)夫婦で別々に項目を設けた
介護保険料(夫)夫婦で別々に項目を設けた
国民健康保険(妻)夫婦で別々に項目を設けた
介護保険料(妻)夫婦で別々に項目を設けた
老後の医療費(夫)75歳から年30万円を積み立て(使わない年は繰り越す積立方式)
老後の医療費(妻)75歳から年30万円を積み立て(使わない年は繰り越す積立方式)
介護費79歳から年50万円を積み立て(使わない年は繰り越す積立方式)
リフォーム代時期を決めて計上
20年ごとに買い替えを想定
家電5年ごとに買い替えを想定
墓じまい両親から相続したもの。子に負担を残さないよう、自分で処分する
旅行費+遊興費生活費とは別の項目で管理

そして、資産・現金側。毎年の「現金余力」を確認できるよう、現金の項目も別に立てています。

資産・現金の項目内容・考え方
現金毎年の現金比率を確認するために設けた
総合計資産+現金
日本株(2%)日本株の成長率を年2%で設定
日本株 売却NISA移行時の売却を計上する項目
4%取崩後、運用投資信託を4%取り崩した後の、残りの運用額
4%取り崩し額投資信託を4%で取り崩した金額
投資信託(4%)取り崩し前の金額。65歳前まで使用
投資信託(7%)「7%で運用できたら?」を試す、私の楽しみ枠
NISA 日本株(2%)日本株の成長率を年2%で設定
日本株 配当(2.8%)含み益が膨らんだため、配当率を2.8%に
自社株 売却60歳までの計画(在籍中に実行)
会社積立金 受取60歳までの計画

現金比率を見える化したこの作りは、Fableにも褒められた数少ないポイントでした。一方で、投資信託の4%と7%の運用枠——「7%で回せたらどうなるかな」という、私のちょっとした遊び——は、「紛らわしいので別シートに分けては」と、やんわり助言されました(笑)。NISAと特定口座も、きちんと分けてあります。

生活費を一定にしていたのにも、言い分があります。インフレは覚悟していました。ただ、歳を取ると活動量が減って、支出も自然に減っていく。だから「インフレによる増加」と「加齢による減少」が、だいたい相殺するだろう——そう考えて、一定にしていたのです。

それでも、58点でした。

反論できなかった、3つの指摘

指摘は細かいものを含めると10項目以上ありましたが、核心は3つです。

① インフレが、検証されていない

生活費480万円を、2024年から2052年まで、29年間ピタリと固定していました。私の「加齢で相殺される」という言い分に対して、返ってきたのはこうです。——相殺するという仮説はあり得る。でも、それを数字で検証した形跡が、表のどこにもない。インフレが年2%なら、2052年に480万円分の生活をするには、名目772万円かかります。差額を積み上げると、約3,400万円。残るはずだった資産が、これだけで大きく削られる計算です。

資産は名目リターンで増やしながら、生活費は今の物価のまま。「名目で増やして実質で使う、ご都合主義の混在」と言われました。返す言葉がありません。

② リタイア直後の暴落シナリオが、ゼロ

私の資産は、ほぼ100%株式です。リタイア直後にS&P500が▲40%(2000年や2008年は、実際に▲45〜50%でした)になると、定額の取り崩しが、実質6.8%の取り崩し率に跳ね上がる。いわゆる「シーケンスリスク」で、4%ルールが破綻する典型パターンだそうです。それを検証した形跡が、表にない、と。

③ 表が「夫85歳」で終わっている

60歳女性の約半数は、90歳まで生きるそうです。妻は私より3歳年上なので、妻95歳まで考えると、2059年まで資金が必要になります。さらに、私が先に死んだあとの「妻ひとりのシナリオ」がない。年金は遺族厚生年金に置き換わって世帯収入は大きく減るのに、生活費は半分にはならないからです。

もちろん、反論できた点もあります。年金額はねんきんネットで確認済みでしたし、遊興費は織り込み済み、娘への援助もすでに実行済みです。住民税や国保の罠も、ちゃんと拾ってありました。ただ、核心の3つには、ひとことも言い返せませんでした。マクロ経済スライドによる年金の実質目減りも、正直、あまり気にしていなかった口です。

AIの「気づき」に驚いた話

悔しいのであまり褒めたくないのですが、驚いたことを2つだけ書きます。

ひとつは、表に「書いていないもの」を見抜いたことです。私は加給年金を計上していないのですが、Fableは「奥様が3歳年上なので、加給年金は対象外。計上していないのは正しい」と、空欄の意図まで読み取ってきました。間違って入れる人が多い箇所だそうです。

もうひとつは、年金繰下げの検証結果です。「繰下げ受給は、長生きリスクへの最強の保険」とよく言われますし、私もそう信じていました。70歳まで繰り下げれば、年金は+42%に増えます。

ところが、Fableに作らせたシミュレーションで「リタイア直後に暴落+70歳繰下げ」を試すと、結果はむしろ悪化しました。受給が始まるまでの5年間、資産を底値で売る量が増えて、枯渇が2年早まったのです。繰下げは「65歳の時点で暴落が来ていなければ実行する」という、条件付きの判断にすべきだと。これは、自力では一生気づかなかったと思います。

シナリオ別の試算結果も、載せておきます(Fableが私の表を再現して試算したもので、細部の置き方が違うため、私の元の数字とは少しズレます)。

  • シナリオA(元の表をそのまま再現)→ 2052年に5,000万円以上残る
  • シナリオB(インフレ1.5%を入れる)→ 2055年に資産枯渇
  • シナリオC(実質リターン4%を維持+リタイア直後に▲40%暴落)→ 2047年に枯渇
  • シナリオD(Cに加えて70歳繰下げ)→ 2045年に枯渇(さらに悪化)

同じ表が、前提ひとつで、ここまで変わります。

「最悪パターン」を、自分で作ることにした

年金そのものにも、目減りの仕組みが組み込まれています。厚労省の財政検証(2024年)によると、年金の水準を示す所得代替率は、現在61.2%。これが堅めのシナリオ(過去30年投影ケース)では、50.4%まで下がります。私の年金額に当てはめると、年40万円位の目減りです。

そこで、自分に宿題を課しました。

①インフレ年1.5%、②所得代替率50.4%での 年金額、③リタイア直後に▲40%の暴落、④妻95歳まで。

この4つを全部盛り込んだ「最悪パターン版」のキャッシュフロー表を、1枚作ります。それでも現金が尽きないことを確認できて、初めてFIRA60にGOサインが出せる。Fableの言葉を借りれば、そういうことになります。

おわりに ── 当てるためではなく、慌てないために

自信作が、58点。正直、数日はへこみました。ただ、リタイア後の本番で打ち砕かれるより、670日前の机上で打ち砕かれるほうが、ずっと安く済みます。

……と、ここまで書いておいて、こんなことを言うのもなんですが。
正直、この様な議論は不毛だな、とも思うのです。

30年先のインフレも、暴落の年も、自分が何歳まで生きるかも、誰にも分かりません。
当たらないと分かっているものを、何枚も作り直している。
想像で未来を当てにいくのは、たぶん不可能です。

それでも作るのは、未来を当てるためではないのだと、このブログにまとめている時に、思うようになりました。

人生を地図のない冒険にしないための、キャッシュフロー表です。

地図にたとえるなら、最悪のパターンの表は「この先に崖があるか」を予言する地図ではありません。
明るいうちに一度歩いて、下見する作業です。
一度でも見ておけば、いざ暴落が来たときに「ああ、これは想定の範囲だ」と思える。
底値で投げ売りせずに済む。
当てるためではなく、慌てないために想像する。そういう物なのだと思います。

そして、最悪のパターンの表が「それでも資産は尽きません」と出た瞬間に手に入るのは、たぶん残高の数字ではありません。「もう、この件で悩まなくていい」という、心の準備。

お金の不安は、放っておくと頭の中で無限に膨らんで、楽しむための余白を食い潰していきます。その不安を、明確にしておく。そうしてようやく、運転席を全開にして、次の道を走ることに、心を100%向けられる。机上で全力を尽くすのは、机から立ち上がって走り出すためなのだと思います。

結局、答えはシンプルなのかもしれません。
シミュレーションに「正解」を出させようとすると、途端に不毛になる。
表の仕事は、不安を明確にするところまで。
その先の「で、どう生きるか」は、表の外にしかありません。
机上での損得計算よりも、今より少しでも楽しい未来になるように、ベストを尽くす。
たぶん、それが答えです。

とはいえ、今週末はやっぱり、Excelとにらめっこなのですが。それも、走り出すための準備運動だと思えば、悪くありません。

それでは、また。

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